潮を読んで二十年、いまは天気を読む 元「潮読み」の予報士転身
潮送り競技・砂町漕艇部で二十年近く「潮読み」を務めてきた波多野汐路(はたの・しおじ、52)が、湾岸テレビ(BTV)の朝の情報番組で天気予報コーナーを担当するようになって半年が経った。潮の満ち引きを読んで出発時刻を決める仕事から、翌日の天気を読む仕事へ。畑違いに見える転身の裏には、TDA予報課との縁があった。
■ 「潮読み」から予報士へ、半年の異色転身
湾岸テレビ(BTV)の朝の情報番組「けさの湾岸」の天気予報コーナーに、今年4月から新しい顔が立っている。波多野汐路(はたの・しおじ、52)。既報の十競技「潮送り」で、深川潮送り会と並ぶ強豪・砂町漕艇部の「潮読み」を二十年近く務めてきた人物だ。潮送りは08-スポーツ十競技ガイドにもあるとおり、出発時刻が潮汐表で決まり毎回違う競技で、「潮読み」は漕ぎ手を兼ねながら当日の潮の動きを見極める役目を担う。
■ TDA予報課での研修がきっかけ
波多野によれば、転身のきっかけは3年前、TDA予報課が潮送り関係者向けに開いた「潮汐と透過指数の関係」に関する研修会だった。「潮読みの経験は、潮の動きを直感で掴む力はあっても、気象学の理屈はまるで知らなかった。研修で予報課の職員に基礎から教わって、面白くなってしまった」と振り返る。以後、休みの日にTDA予報課の観測補助を手伝うようになり、気象予報士の資格を独学で取得。BTVの人事担当者の目に留まり、今年4月からコーナーを任されることになった。
■ 「潮の勘」は天気予報にも生きる
波多野は「潮読みの勘がそのまま使えるわけではないが、風のにおいや雲の動きを『いつもと違う』と感じる直感は、潮を読んでいた頃と地続きだと思う」と話す。BTVのプロデューサーは「気象学的な正確さはもちろん大事だが、波多野さんの解説には現場で長年『読み』をしてきた人の言葉の重みがある。視聴者からの評判も上々」と評価する。
■ 砂町漕艇部「寂しいが、応援している」
砂町漕艇部の後任の潮読みは、波多野の弟子筋にあたる20代の部員が務めている。部の代表は「波多野さんが抜けた穴は正直大きいが、テレビで潮送りの名前を出してくれることもあって、部としては応援している」と話した。波多野自身も月2回の大潮の週末には可能な限り現場に顔を出し、後任に助言を続けているという。
■ 「潮送り」自体の知名度にも一役
BTVのコーナーでは、波多野が時折「今日は大潮に近いので、湾岸部の透過指数もやや動きやすい」といった潮汐と揺らぎ観測を絡めた解説を挟むことがあり、これが既報の潮送り競技そのものの認知度向上にもつながっているという。08-スポーツ十競技ガイドにあるとおり潮送りは大潮の週末に月2回行われる競技で、出発時刻が毎回変わるため一般の認知度は他競技に比べて低いとされてきた。BTVのプロデューサーは「波多野さんが天気予報のついでに潮送りの話をすると、視聴者から『今度見に行ってみたい』という反応がある。畑違いの転身が、もとの競技の宣伝にもなっている」と話す。
■ 記者の視点
潮を読む仕事と天気を読む仕事は、素材こそ違うが「目の前の自然の機嫌をうかがう」という一点で地続きなのかもしれない。波多野の解説にどこか漕ぎ手らしい実務的な落ち着きがあるのは、二十年分の潮の勘が、画面の向こうでいまも働いているからだろう。
