資料
世界の国々
世界には181の国と地域がある——国際次元境界機構(IDBO)の加盟数だ。揺らぎは世界中で起きるが、発生の約4割は東亰湾岸に集中する。1988年の透過条約以来、世界は一つの問いをめぐって割れてきた。観測データは人類共通の財産か、国家の主権か。本紙に登場する国々と、それぞれの立ち位置をまとめた。
東洋
日ノ國 Hinokuni
揺らぎの発生数で世界の約4割を占める「揺らぎ大国」。TDAの観測技術と定常窓5基は世界の先頭。外来系技術の免許制、漂着民の市民権など制度面でも先行する。
玄洲 Genshu
大陸の大国。内陸の渭水回廊に世界第2の揺らぎ帯を抱え、国営の鑑定産業を持つ。「観測主権」を掲げ、第7次国際共同研究にはオブザーバー参加のみ。
日ノ國との関係 最大の貿易相手。観測データの共有をめぐり緊張と協力が同居。2019年の渭水協定で部分的なデータ交換。
韓洋 Kan'yo
半島の共和国。海峡をはさんで日ノ國と揺らぎ帯を共有する。壁上競走と六角球の強豪国。
日ノ國との関係 1998年から海峡共同観測所を運営。海上漂着物の帰属で時々もめるが、実務協力は厚い。
瑠海王国 Kingdom of Rukai
南洋の島嶼国。揺らぎ多発海域を抱え、漂着物の回収技術で立国した「拾う国」。世界で唯一、王室が漂着民の血を引く。
日ノ國との関係 漂着物の鑑定協力協定(2026年8月拡大)。友好国。国王カイエ3世は東亰の若者にも人気。
台瀛 Tai'ei
島嶼の共和国。精密部品と半導体に強く、定常窓の観測装置の3分の1は台瀛製の部品を使う。
日ノ國との関係 窓機(定常窓の観測装置)の部品の主要供給国。技術パートナー。
越洋 Etsuyo
南方の細長い共和国。河口の港が漂着物の「灰色市場」で知られる。
日ノ國との関係 漂着物の非公式市場の中継地とされ、税関協力を協議中。
泰洋王国 Kingdom of Taiyo
南方の王国。漂着民の受け入れの歴史が長く、寺院が漂着民の保護施設を兼ねた時代がある。
日ノ國との関係 1975年の漂着民を日ノ國に次いで多く受け入れた国。王室同士の交流がある。
七千島 Seven Thousand Islands
群島の共和国。島ごとに漂着物の扱いが違い、統一法制が課題。
日ノ國との関係 海上漂着物の回収で瑠海と競合し、日ノ國には鑑定人の派遣を求めている。
星洲 Seishu
港湾都市国家。漂着物の保険・再保険・先物取引の中心。
日ノ國との関係 漂着物取引の金融ハブ。東亰漂着物指数(TDI)の先物はここで取引される。
南亜
ヒンド連邦 Hind Federation
人口最大の連邦。揺らぎの数理モデルで世界をリードし、「予報」の理論の多くはここで生まれた。
日ノ國との関係 第7次国際共同研究の共同議長国。観測理論の数学的基盤で日ノ國の学界と深い交流。
北方
ルーシ連邦 Rus Federation
北の大国。ツンドラ帯に広い揺らぎ帯を抱えるが、観測結果はほぼ非公開。玄洲とともに「主権派」の柱。
日ノ國との関係 観測データを公開せず、漂着生物の国外持ち出し疑惑がくすぶる。外交は冷えている。
西洋
ブリタン連合王国 United Kingdom of Britan
島国の連合王国。北海の揺らぎ帯を海上やぐらで観測し、保険市場が揺らぎリスクを値付けする。
日ノ國との関係 漂着物保険の再保険市場を握る。海上観測で協力。
フランセ共和国 Republic of Francé
術師の免許制度を1996年に始めた先駆国。外来系技術を「芸」として扱う文化がある。
日ノ國との関係 外来系技術の免許制度をほぼ同時期に始めた「制度の同期」。文化交流が厚い。
ドイチェ連邦 Federal Republic of Deutsche
工業と規制の国。定常窓の倫理指針を最初に法制化した。
日ノ國との関係 窓機の精密光学部品を供給。軍事転用禁止では最も厳格な立場で、日ノ國に同調を求める。
イタリヤ Italiya
漂着物を美術品として評価する伝統があり、鑑定士は「目利き」と呼ばれる。
日ノ國との関係 漂着物の修復・保存技術で協力。美術品扱いの漂着物の鑑定は世界一。
エスパニヤ Espanya
半島の王国。六角球のプロリーグは世界最高峰とされる。
日ノ國との関係 六角球の強豪。スポーツ交流が中心。
ネデルラント Nederland
低地の王国。港湾都市が揺らぎ帯を抱え、防潮と揺らぎ観測を一体で運用する。
日ノ國との関係 湾岸の埋め立て・港湾技術で東亰と姉妹都市協定。
ノルディア連合 Nordia Union
北欧4国の連合。揺らぎに関するすべての観測を公開する「完全公開原則」を持つ。倫理の国と呼ばれる。
日ノ國との関係 観測データ完全公開の旗手。日ノ國に「公開法」の制定を促す。
ヘルヴェティア連邦 Helvetia
山岳の中立連邦。1988年の透過条約はここで署名された。
日ノ國との関係 国際次元境界機構(IDBO)の本部ジェネーバを擁する。外交の舞台。
ポロニア Polonia
平原の共和国。共生ロボットの法的地位を世界で最初に「準人格」と定めた。
日ノ國との関係 共生ロボットの部品供給と、ロボット法制の比較研究。
ヘラス Hellas
半島と島の共和国。古代文献に揺らぎらしき記述が残るとされ、学者の往来がある。
日ノ國との関係 古代の「揺らぎ伝承」文献の共同研究。
中東
パルス共和国 Republic of Pars
高原の共和国。千年前の「揺らぎ」記録を持つと主張し、古文書の公開を交渉材料にする。
日ノ國との関係 外交関係は薄いが、揺らぎ伝承の文献研究で学者の交流がある。
アラビヤ連合 Union of Arabiya
産油の連合国家。砂漠に「砂窓」と呼ばれる揺らぎ帯を抱え、資金力で観測装置を集める。
日ノ國との関係 定常窓技術の購入を申し出て、日ノ國政府を悩ませている。
トゥルク共和国 Turk Republic
東西の橋の国。漂着物の陸上輸送路の要衝。
日ノ國との関係 東西の漂着物を仲介する貿易国。税関協力。
レバント連邦 Levant Federation
東地中海の連邦。1975年の漂着民を受け入れた歴史がある。
日ノ國との関係 人道支援を通じた関係。漂着民の受け入れで協力。
阿州
ナイル共和国 Republic of Nile
大河の国。河谷の揺らぎ帯と古代遺跡が重なり、考古学者と観測員が同じ現場に立つ。
日ノ國との関係 考古学と揺らぎ研究の共同事業。
アビシニア連邦 Abyssinia Federation
高地の連邦。漂着生物の生態系影響を最初に体系的に調べた国。
日ノ國との関係 漂着生物の生態研究で協力。TDAの研修生を受け入れ。
黄金海岸共和国 Republic of the Gold Coast
西海岸の共和国。配信文化が盛んで、岸辺セブンの海外人気の中心。
日ノ國との関係 若い人口と配信文化。カイエ3世の即位配信を最初に世界へ広めた。
南阿連邦 Southern Union of Afrika
南端の連邦。鉱山の縦坑を使った走塔競技の発祥地。
日ノ國との関係 鉱物と観測機器の貿易。走塔の強豪。
サヘル諸国連合 Sahel States Union
内陸の連合。観測網がまだ薄く、国際支援の対象。
日ノ國との関係 揺らぎ観測網の整備を支援。
ザンジ諸島 Zanj Islands
東海岸沖の島嶼共和国。漂着物の海上回収で瑠海と姉妹関係。
日ノ國との関係 島嶼の漂着物回収で瑠海と三国協力。
北米
アメリア合衆国 United States of Ameria
超大国。大平原に揺らぎ帯を抱え、民間企業が観測に参入する。軍事転用の懸念で公開派と対立することがある。
日ノ國との関係 同盟国。定常窓技術の供与と軍事転用の扱いをめぐる「窓条約」を交渉中。
カナディア Canadia
広大な連邦。北極圏の揺らぎ帯を国際共同で観測する。
日ノ國との関係 公開派の重鎮。漂着民の受け入れ制度を日ノ國と相互参照。
メヒコ合衆国 Mexica
高原の連邦。漂着民由来の競技「尾追い」がプロ化した最初の国。
日ノ國との関係 尾追いの強豪で、スポーツ交流が盛ん。
南米
ブラジリヤ連邦 Federation of Brasilia
熱帯の連邦。密林に反復揺らぎの候補地があり、世界第6の定常窓が期待される。
日ノ國との関係 第6定常窓の候補地として日ノ國の調査課が技術協力。六角球の王国。
アルヘンティナ Arxentina
南部の共和国。平原の風を使う凧合戦が国技。
日ノ國との関係 牛肉と穀物の貿易。凧合戦の強豪。
アンデス連合 Andean Union
山脈の連合。高地に揺らぎ帯があり、薄い空気の中で観測が続く。
日ノ國との関係 高地観測所の建設を支援。
大洋州
オーストラリス連邦 Australis
大陸の連邦。内陸砂漠の揺らぎ帯から漂着した生物が生態系を変えた経験から、検疫が国是。
日ノ國との関係 漂着生物の検疫で世界最厳格。日ノ國の特定漂着種リストを共同更新。
アオテア Aotea
南の島国。漂着民を最初に国会議員に選んだ国。
日ノ國との関係 公開派の良心。漂着民の権利で日ノ國と共同声明を出す常連。
島嶼諸国連合 Pacific Islands Union
太平洋の小国の連合。海面上昇と漂着物の両方に向き合う。
日ノ國との関係 海上漂着物の回収で瑠海と日ノ國が支援。
——名前のある国は本紙に登場した順に増える。残りの国は、紙面に出たときに名前が付く。
広告

『一九七五年の窓』増刷二十刷
問いは誰のものでもある。九重果林・著
湾岸書房