投札の沢渡権蔵、稽古を再開 「11月、もう一度やらせてもらう」
既報どおり月例大会決勝で新鋭・小此木大地(23)に敗れた投札の名人・沢渡権蔵(77)が、12日の潮見橋商店街投札会の稽古日に姿を見せ、約1週間ぶりに木札を投げた。「11月、もう一度やらせてもらう」と再戦を公言し、商店街の仲間たちから笑いと拍手が起きた。
■ 負けてから1週間、姿を見せなかった
潮見橋商店街投札会の名人・沢渡権蔵(77)は、既報の9日の月例大会決勝で新鋭・小此木大地(23、漂着二世・兎系)に3枚2升対4枚3升で敗れた。協会の記録では約3年ぶりの大会敗退だった。それ以来、沢渡は毎週の稽古日に顔を出さず、商店街では「さすがにこたえたのでは」という声も出ていた。
12日の稽古日、沢渡はいつもの開始時間より少し早く現れた。誰にともなく「ちょっと早く来ただけだ」と言いながら、木札の入った古い巾着袋を取り出し、約1週間ぶりに的の升目に向けて投げ始めた。最初の数枚は普段より枠の外に逸れたが、終盤は普段どおりの精度に戻ったという。
■ 「負けを数えるより、次の升を数える」
稽古の終わりに、沢渡は仲間たちに向けて「11月、もう一度やらせてもらう」と再戦を公言した。「負けた升を何度数えても、升は増えない。次に投げる升を数えるほうが、よっぽど性に合っている」との一言に、集まっていた常連客からは笑いと拍手が起きた。
小此木大地は取材に「再戦の話は自分の耳にも入ってきた。受けて立つというより、また投げてもらえるのがうれしい」と率直に語った。小此木にとっても、名人との再戦は入会2年目で得た最大の機会になる。協会関係者は「名人が負けて終わらないのが、この競技のいちばんいいところだ」と話した。
■ 「負けた升」を振り返る
稽古の合間、沢渡は負けた決勝戦の「3枚2升対4枚3升」という結果について、仲間に問われてこう振り返った。「あの日は風もないのに、最後の1枚だけ手元が狂った。言い訳に聞こえるだろうが、狂ったことに気づいたのが投げたあとだったのがいちばん悔しい」。この一言に、稽古を見ていた若手たちからは「名人でもそういうことがあるのか」という声が上がったという。沢渡は「あるから、面白い競技なんだ」と笑って返した。
協会の記録によれば、沢渡がこれまでの約50年の競技歴で公の場で再戦を自分から口にしたのは、今回が3度目だという。過去2度はいずれも沢渡が勝っており、今回が初めて「挑む側」としての再戦表明になる。
■ 次の月例大会は11月
潮見橋商店街投札会の次の月例大会は11月に予定されている。沢渡が調整を続けられるかどうか、商店街の常連たちは早くも日程を気にしているという。



