深川仲見世商店街の掃除ロボ「番太」、15年の勤務を終え引退
深川仲見世商店街で2011年から通路の清掃と夜間の見回りを担ってきた共生ロボット「番太」が13日、部品の生産終了を理由に引退した。商店会は朝の営業前にささやかな感謝の会を開き、常連客も見送りに訪れた。ロボットの引退に正式な手続きが無いことが、法的地位が「いまだに揺れている」現状をあらためて映し出した。
■ 四角い箱、15年の見回り
「番太」は箱型の四輪清掃ロボットで、ブラシとモップを兼ねた清掃部と、簡単な障害物回避機能を持つ。人に似せすぎない「非ヒト型」の外観規範どおり、顔も手足もない。2011年、商店会が共同で導入し、昼は通路の清掃、夜は無人になった商店街のシャッターの異常を見回る役目を15年続けてきた。編集部の「二号」と同型機種で、当時はまだ珍しかった長時間稼働モデルだったという。
商店会長の橘守さん(68)は「名前の『番太』は、昔の町の木戸番にちなんで、当時の組合長が付けた。顔は無いのに、みんな『おはよう』と声をかけていた」と話す。
■ 部品の生産終了、修理の見込みなし
今年8月、走行用の主要部品が破損し、メーカーに在庫を確認したところ、当該部品の生産は2019年に終了しており、代替品の設計変更も採算が合わないと回答があった。商店会は代替機の導入を検討する一方、「せめて最後は商店街の中で見送りたい」と、引退の日を13日に決めた。
■ 「お別れ」の手続きは無い
商店会は朝の開店前、番太の周りに紙飾りと小さな花束を置き、常連客や近隣住民約20人が集まって見送った。長年通う喫茶店主の女性(74)は「毎朝すれ違うだけの機械だったのに、いなくなると分かると急に寂しくなった。お葬式でもないし、何と呼べばいいのか分からないけれど」と話した。
既報のロボット法制審では、共生ロボットの法的地位――財産か、限定的法人格か――が14年連続で持ち越されている。商店会長は「番太に人格があるかどうかなんて、難しいことは分からない。ただ、引退のときに『ご苦労さまでした』と言える決まりくらいは、どこかにあってもいいんじゃないか」と語った。番太の後継機は来月、同じ商店会が別メーカーの機種を導入する予定だが、名前はまだ決まっていない。
■ 汐入梨花記者の視点
顔も声も無い機械を見送る人々の表情に、言葉にしづらい感情があった。準人格論争は国会の中だけの話ではなく、こうした商店街の朝にも、確かに存在している。


