機巧走「機巧祭」10月4日、常磐堂が預かりロボット「四号」で出場へ 永代預かりの身に稽古の日々
非ヒト型の共生ロボットと人が組んで走る障害走「機巧走」の年間最大行事「機巧祭」が10月4日、京橋本社ビル特設コースで開かれる。京橋の共生ロボット永代預かり業「常磐堂」が23日、預かり中のロボット「四号」で今年も出場すると発表した。役目を終えて預けられた身のロボットが競技に出るという構図が、既報のロボ法制審の議論をよそに、この街で静かな人気を集めている。
■ 「預かりの身」で出場、今年も
機巧走は非ヒト型の共生ロボットと人がペアを組み、障害を越えながら走るタイムレースで、スコアは「n組・n分n秒(介助n回)」の形で表記される。年1回の「機巧祭」は10月、通常の4月大会よりも規模が大きい年間最大行事として位置づけられ、京橋本社ビル周辺に特設コースが組まれる。既報のとおり京橋の共生ロボット永代預かり業「常磐堂」は月1回の「起動日」で知られるが、23日、今年も機巧祭に預かりロボットのチームで出場すると発表した。出場するのは掃除・搬送用に設計された非ヒト型ロボット「四号」で、預け主の家族の了承を得たうえで、稽古期間中だけ一時的に起動しているという。
■ 稽古の相棒は若手従業員
「四号」の人間パートナーを務めるのは、常磐堂に今年入った従業員・沖田大和(24)。沖田は「最初は預かり品を動かすことに気後れしたが、四号がひどく張り切っているのが伝わってきて、こちらも本気にならざるを得なかった」と話す。四号はもともと段差の多い倉庫内での搬送作業用に設計された個体で、稽古では障害を越える動きに支障はないが、「介助」の回数をいかに減らすかが目下の課題だという。稽古はビル裏の狭い通路を使い、週3回、夕方に行われている。
■ 「似せすぎ規制」の範囲内で
既報のとおり共生ロボットの外観規範は非ヒト型が主流で、「似せすぎ規制」の是非が恒常的な論争テーマになっている。四号の改造は規制の範囲内にとどめられており、増設されたのは低い障害物を検知するための追加センサー1個のみ。常磐堂の店主(72)は「四号を人間らしく見せるつもりは毛頭ない。四角いままで、できることを増やしてやりたいだけだ」と話す。機巧走の競技団体も「ロボットの改造は似せすぎ規制の範囲内に限る」という原則を維持しており、常磐堂のチームはこれまでも規約違反を指摘されたことはないという。
■ ロボ法制審の外側で
既報のとおりロボット法制審は10月に公聴会を予定しており、「準人格」の法的地位をめぐる議論が続いている。常磐堂の店主は「役目を終えて預かっている四号が、それでも稽古の日は誰より早くシャッターの前で待っている。準人格かどうかという話とは別の場所で、うちの店ではもう答えが出ている」と静かに語った。既報の連載「岸辺食堂」にも登場する常連客の中には、常磐堂のロボットたちを知る者もおり、飲食店主の瀬能タカラは「起動日にしか会えないと思っていた子が、機巧祭に出るというので驚いた」とコメントしている。
■ 出場チームは全国から
主催の機巧走競技団体によると、機巧祭には大学サークルを中心に全国から出場申し込みが相次いでおり、10月4日の出場枠は例年より2割ほど増える見通し。常磐堂チームは過去2回の大会でいずれも中位に沈んでいるが、沖田は「今年は四号のセンサーが増えた分、介助の回数を減らせるはず。目標は初めての入賞だ」と意気込む。
■ 遠野汀記者の視点
機巧走は10種目の中でもとりわけ「よくわからないのに毎日結果がある」の作法が似合う競技だと思う。役目を終えて預けられたはずのロボットが、稽古の日だけ動き出して走る――その理屈を説明しようとすると、法制審の議論と同じところに行き着いてしまう。だから説明しないことにする。10月4日、四号がどんな顔(があるとすれば)で走るのか、見に行くつもりだ。
