第122系統の子ども靴、ネットで「隣の世界」説再燃 鑑定センターは慎重姿勢崩さず
9月19日に砂町で発見された子ども用の靴(暫定第122系統)をめぐり、縫製・底材の技法が第31系統「隣の世界」の長靴(透暦40年発見)とほぼ一致するとの既報の指摘が、今月下旬になってネット上で「同一系統では」との説として再燃している。第三鑑定センターは27日、同位体比は明確に別系統であるとする既報の分析結果を改めて説明し、「系統が違う、というだけでは説明がつかない」との慎重な立場を崩していない。
■ ネットで「同一系統」説、既報の類似指摘から再燃
第三鑑定センターによると、既報のとおり9月21日に暫定第122系統として登録された子ども用の靴(片方のみ、砂町で発見)は、縫製と底材の技法が第31系統「隣の世界」で確認されている長靴(透暦40年に発見)とほぼ一致すると指摘されていた。この既報の指摘が、9月下旬になって観測愛好家や在野の研究者が集うインターネット上の掲示板・動画配信を中心に「実は同一系統なのではないか」との説として再び取り上げられ、拡散した。市立漂着物資料館(既報)で第122系統の靴が第31系統の三輪車と並んで一時展示されていることも、話題の再燃を後押ししたとみられる。
■ 鑑定センター「同位体比は明確に別系統」
第三鑑定センターは27日、既報の分析結果を改めて説明した。「縫製・底材の技法に共通する意匠が見られるのは事実だが、同位体比は明確に別系統であり、この点は今回の再燃を受けても変わらない」とのコメントを発表した。第三鑑定センターの鑑定官(氏名非公表)は本紙の取材に「技法が似ているというだけで系統が同じだと考えるのは、いわば別の国で似た形の靴が作られているのと同じ現象かもしれない、という可能性を排除できていないということ。同位体比という物理的な指標を無視して結論を出すことはできない」と述べた。
■ 在野研究者「断定はしないが、注目すべき一致」
在野研究者の九重果林(52、既報)は本紙の取材に「同位体比が別系統であることは鑑定センターの分析を信頼している。ただ、技法の一致がこれだけ具体的だと、系統どうしの間に何らかの間接的な接点があった可能性は、興味の対象として捨てきれない」と話した。九重は次回作の主題である湾岸九霧事象とは直接関係しないとしつつ、「隣の世界」に関する取材を今後も続けたいとの意向を示した。
■ 資料館「展示は誤解を招く目的ではない」
市立漂着物資料館の学芸員(氏名未設定)は「第122系統の靴を第31系統の三輪車と並べて展示したのは、両者が『持ち主の現れない荷物』という同じ常設展の趣旨に合っていたからで、系統が同じだと示す意図はなかった」と説明した。それでも会場では「同じ世界のものでは」と話す来館者の声が相次いだといい、学芸員は「誤解を招く形になったのなら申し訳ないが、来館者がそれぞれの見方で系統どうしの関係を想像するのも、この常設展の楽しみ方の一つだとは思っている」と述べた。
■ 対になる靴、依然未発見
既報のとおり第122系統の靴は片方のみで発見されており、対になる靴は依然見つかっていない。第三鑑定センターは「対になる靴が見つかれば、製法の判断材料がさらに増える」としており、周辺地域での追加捜索を継続する方針に変更はないという。第31系統「隣の世界」は窓を持たない系統で、これまでに三輪車(既報)と長靴の2点のみが確認されている。
■ 記者の視点
「同じ系統ではないか」という説が広まるたびに感じるのは、読者がこの世界の広さそのものを楽しんでいるという実感だ。鑑定センターが同位体比という物理的な指標を頑固に手放さない姿勢は、地味に見えて誠実だと思う。系統が違う靴と長靴が、なぜこれほど似た技法で作られているのか。答えの出ない問いを面白がれるくらいには、この世界はまだ十分に広い。
