深川で初の氏族合同秋祭り、犬系と熊系の自治会が共催
深川の漂着系住民のうち、港湾・警備の家系に多い犬系と、山手の職人集落にルーツを持つ熊系の二つの自治会が3日、初めての合同秋祭りを深川の河川敷で開いた。それぞれ別々に営んできた祭礼を一つの会場にまとめる試みで、太鼓の打ち方や屋台の献立の違いを「見せ合う」構成にしたところ、来場者は例年の単独開催の合計を上回る約1200人に上った。
■ 別々だった祭りを一つに
深川の河川敷で3日夜、犬系自治会と熊系自治会による初めての合同秋祭りが開かれた。犬系は既報どおり港湾・警備・消防の家系に多く、祭礼では立ち耳に合わせた甲高い太鼓の連打が特徴。熊系は山手の職人集落にルーツを持ち、丸い耳に合わせたゆったりとした低い太鼓の拍子を伝統とする。これまでは同じ時期に別々の会場で祭りを開いてきたが、両自治会の若手世代が「同じ深川に住んでいるのに、互いの祭りを見たことがない住民が多すぎる」と企画を持ち込み、今年初めて合同開催にこぎつけた。
■ 企画した二人
実行委員を務めた犬系の瀧浪悠人(たきなみ・ゆうと、26)は港湾警備会社に勤める二世で、「うちの太鼓は『速さで気合を示す』のが伝統で、熊系さんの太鼓はまったく逆の『ためで聞かせる』やり方だと知って、単純に驚いた。見せ合えば面白いはずだと思った」と話す。共同企画者の熊系・柊木環(ひいらぎ・たまき、29)は山手の料理人の家系出身の二世で、「うちの屋台は味を濃くして日持ちさせる山手の知恵が土台にあるけれど、犬系さんの屋台は港で働く人向けに、短時間で食べきれる軽い味つけが多い。並べて出したら、お客さんがどっちも試してくれた」と笑う。両者とも獣徴は耳・瞳・尾の二世セットで、太鼓を打つ瀧浪の立ち耳と、料理する柊木の丸い耳が並ぶ構図は、会場でも「初めて見た」という声が相次いだ。
■ 違いを「対立」でなく「演目」に
両自治会の間には、これまで墓の作り方や結婚の際の儀礼をめぐって小さな摩擦があったことも、取材に応じた年配の住民から語られた。犬系の古参役員の一人は「昔は『うちの祭りに熊系の太鼓はいらない』と言う人もいた。それが今年は、若い衆が勝手に話をまとめてしまった」と苦笑しつつ、「悪い話じゃない」と受け入れた表情を見せた。瀧浪は「対立の種をなくそうとしたわけじゃなく、違いをそのまま見せ合う方が、かえって角が立たないと分かった」と話す。
■ 子どもたちの反応
会場では、両方の太鼓を交互に体験できる「叩き比べ」の列に子どもたちが長く並んだ。小学4年の男の子は「犬系の太鼓は腕が疲れるけど楽しい。熊系の太鼓は、間を外すと怒られないのに自分で恥ずかしくなるのが不思議」と話した。付き添いの保護者の一人は「うちの子は獣徴がないけれど、太鼓を習うのに氏族は関係ないと分かって、来年は教室に通わせたいと言い出した」と笑顔を見せた。
■ 来年は亀戸の氏族も
会場には猫系・狐系の住民や、獣徴のない住民、漂着系以外の市民も多く訪れ、両自治会によると来場者は昨年までの単独開催の合計(約750人)を大きく上回る約1200人になったという。市の共生推進課の担当者は「氏族ごとの行事が合同化する動きは、把握している限り深川が初めて」とコメント。瀧浪と柊木は「来年は亀戸の狐系自治会にも声をかけたい」と意欲を見せている。深川地区連合自治会の会長(ヒト、68)は「正直、若い世代に任せて失敗したらどうしようと思っていた。終わってみれば、自分が40年やってきたよりずっと多くの人が来た」と率直に話し、来年度の予算から合同開催向けの補助を検討する考えを示した。




