速報
← トップへ戻る

連載

岸八の枕:灯りの行列

2026年(透暦52年)10月8日 (寄稿・柳亭岸八) English

©東亰新報

連載コラム「岸八の枕」第5回。第1窓「灯しの街」で観測された灯りの行列の記事を読んだ落語家・柳亭岸八が、自分たちの「窓の日」の灯りについて思いを巡らせる。

今朝の紙面で、窓の向こうに灯りの行列が見えたという記事を読んだ。何百もの灯りが坂道を下っていく、という書きぶりに、しばらく手が止まった。

わたしたちにも、小さいながら灯りの行事がある。「窓の日」だ。由来は諸説あって、誰も決着をつけない。七月の分も、九月の分も、潮見橋通りの皆さんが「だいたい七時」で灯りを置くだけの、号令も無い行事だ。向こうの行列ほどの規模ではないし、見ている相手もいない。それでも、窓辺に小さな灯りを置くとき、こちらの気持ちは行事というよりも、何かに向けて何かをしている、という感覚に近い。

記事によれば、向こうの行列が何のためなのかは、分からないままだという。窓番の皆さんは「分かったふりはしない」と繰り返している。立派な心がけだと思う。わたしたちだって、自分の窓辺の灯りの由来を本当のところは知らない。知らないまま、毎年同じ時刻に、同じことをしている。

落語の世界には「分からないことを、分からないまま面白がる」という芸がある。謎解きをしてしまったら、噺は終わりだ。灯りの行列の記事を読んで、わたしは少し嬉しくなった。向こうの世界にも、こちらと同じ「分からないまま続けていること」があるのかもしれない、と思えたからだ。

今夜、高座に上がる前に、窓辺の灯りを一つ点していくつもりだ。何に向けての灯りなのかは、今日もまだ分からない。

この記事に登場する人物

広告

士道剣技「秋の五番勝負」、10月3日開幕。

学生観戦チケットを今季から新設、通常料金の半額。

関連記事

  • 次元調査

    第1窓「灯しの街」、祭りのような光の行列を初観測 灯窓茶房・見学抽選はさらに沸く

    TDA次元調査課は8日、羽田沖の第1定常窓「灯しの街」(第7系統)で7日夜の開口中、無数の灯りが連なって街路を進む、祭りの行列のような光景を初めて観測したと発表した。稼働開始(2024年3月)以来、人々が「式」の札で灯りや水を操る様子は繰り返し観測されてきたが、多数の灯りが一つの方向へそろって動く光景が確認されたのは今回が初めてという。

  • エンタメ

    柳亭岸八「窓芸」再演決定 追加公演で

    潮騒レコードは26日、既報の音楽祭「岸辺の歌」追加公演(11月14日・湾岸市民会館)に、落語家・柳亭岸八(68)の新作「窓芸」の再演を正式に組み込むと発表した。9月23日の初演からの続投で、調整中とされていた出演内容が固まった。