柳亭岸八、恒例の「岸落語ひとり会」深川末広亭で 窓芸の稽古も明かす
落語家・柳亭岸八(68)の恒例の独演会「岸落語ひとり会」が27日、深川末広亭で開かれた。既報のとおり26日に11月の追加公演での再演が決まった新作「窓芸」については具体的な演目には触れなかったが、高座の合間に稽古の様子を明かし、客席を沸かせた。
■ 深川末広亭、年に数回の恒例興行
柳亭岸八(68)の独演会「岸落語ひとり会」が27日夜、深川末広亭で開かれた。連載「岸八の枕」でもたびたび触れてきた恒例の興行で、柳亭にとって地元・深川での持ち高座は年に数回。収容約180人の小さな席は開場前から列ができ、当日券はすぐに売り切れた。
■ 演目は「岸落語」二席、客席は満席
この日の演目は、柳亭が長年高座にかけてきた「岸落語」の代表作から二席。既報の新作「窓芸」は演じなかったものの、まくらの中で「26日に窓芸の再演が正式に決まった。屋内でどう転ぶか、実は今もまだ悩んでいる」と明かし、客席から笑いと拍手が起きた。柳亭は「二度目で由来を決めてしまわないようにと言い続けているが、稽古のたびに『ここで決めてしまいたくなる誘惑』と戦っている」と続け、稽古の苦労を軽妙に語った。
■ 客「本編そっちのけで枕に笑った」
来場した会社員男性(38)は「本編も良かったが、正直、窓芸の稽古話をするまくらの方が印象に残った。次の高座がどうなるか、余計に楽しみになった」と話した。深川在住の主婦(60代)は「岸八さんの高座は何十年も聞いているが、まくらで世間話をする姿がいちばん柳亭さんらしい。今日も来てよかった」と満足げだった。
■ 「岸辺の歌」追加公演へ、稽古は継続
既報のとおり11月14日の追加公演での「窓芸」再演は26日に正式発表されたばかり。柳亭は終演後の取材に「今日みたいに、まくらで少しずつ様子を話すくらいがちょうどいい。本番までは深く話さないでおきたい」と話し、稽古の進行そのものについては多くを語らなかった。
■ 演目は師匠譲りの一席と、自作の一席
この日かけた二席のうち一席は、柳亭が師匠から継いだ古典的な「岸落語」の演目で、集団漂着の直後の混乱期を舞台にした人情噺。もう一席は柳亭自身の自作で、深川の商店街を舞台にした軽い滑稽噺だった。柳亭は「古い方は師匠の型を守り、新しい方は好きに転がしている。二席並べると、うちの噺の芯が何なのか、自分でも見えてくる」と話した。深川末広亭の席主は「岸八さんの独演会は毎回、古典と新作を一席ずつ組む形が定着している。今日もその形どおりで、常連さんには安心感があったと思う」と説明した。
■ 深川末広亭、開場から地元の高座として
深川末広亭は既報の場所ではこれまで名前が出ていなかった小さな席で、地元の芸人が持ち高座を持つ形で運営されている。柳亭にとっては師匠の代から縁のある場所で、「大きな会場の高座とは客との間合いがまったく違う。深川末広亭では、客の顔を見ながら喋り方を変えられる」と話す。今回のように前売り分が数日で完売するのは近年では珍しく、席主は「窓芸の話題が呼び水になったのは間違いないが、それだけで満席になる場所ではない。岸八さんの地元での積み重ねがあってこそ」と話した。
■ 記者の視点
「窓芸」という新作の話題性に押されがちだが、この日の主役はあくまで「岸落語ひとり会」の二席だった。それでも客席がいちばん沸いたのは、本編ではなくまくらの一言だったという事実が、柳亭岸八という噺家の芸の幅をよく表している気がした。次の高座がどう転ぶか、正直こちらも気になっている。
