合同成人式、市と儀礼団体が初の合意文書 来春試行へ
ハーフ世代の「二つの成人式」問題で、東亰市と漂着系儀礼団体連合は29日、来春の合同式典を試行することで初の合意文書を交わした。
「二つの成人式」問題は、漂着系の家庭に生まれた若者が、市の成人式と漂着系の成人儀礼「岸渡り」の両方に出るか、どちらかを選ぶかを迫られてきた問題だ。岸渡りは夜明け前の湾岸で行われるため市の式典と日程が重なりやすく、近年は「どちらにも行かなかった」という若者が漂着系家庭の2割に達するという調査もある。
29日に交わされた合意文書によると、来春の式典は二部構成となる。式次第の前半に岸渡りの簡略版を組み込み、夜明けの時間帯に合わせて会場の照明を落とし、湾岸の方角に向かって一世の言葉の口上を行う。後半は市の式典をそのまま行う。岸渡りの中核とされる「水に触れる」所作は、湾岸から運んだ海水を用いる形で残す。
■交渉は3年、決め手は当事者の声
市と連合の交渉は3年に及んだ。連合側には「簡略版は岸渡りの切り売りだ」とする反対が根強く、昨年はいったん協議が打ち切られている。再開のきっかけは、当事者世代への合同アンケートだった。回答した約3,400人のうち7割が「形が変わっても、一緒にやれる方がいい」を選んだという。
連合側の交渉役を務めた長老の男性は署名後、「簡略化への懸念は消えていない。岸渡りは千年続いた儀式ではない。私たちがこの51年で作った、まだ若い儀式だ。だからこそ、形を変えることを恐れすぎてもいけないのだと、若い者に教えられた」と話した。「どちらの式にも居場所がないと感じる子をこれ以上出さないことを優先した」
■岸渡りとは
岸渡りは、夜明け前の湾岸で行われる漂着系の成人儀礼だ。参加者は一世の言葉の口上を受けたあと、素足で波打ち際に立ち、両手で海水に触れて戻る。収容所時代、成人した子に「渡ってきた海を、恐れずに触れる」ことを教えたのが始まりとされ、簡素な所作だけで構成される。儀礼の後は家族で朝食をとる習わしで、献立に決まりはないが、「温かい汁物を出す」家が多いという。
市の式典との両立が難しくなったのは、ハーフ世代の人口が増えたこの15年ほどだ。岸渡りは家族単位で行われるため日程の融通が利くように見えるが、実際には「一世か二世の立会人」を頼める日が限られる。立会人の高齢化で夜明け前の湾岸に立てる人が減り、日程は年々、市の式典と同じ祝日に集中するようになっていた。
■来春は湾岸会場のみで試行
合同式典は来春、湾岸市民会館の1会場のみで試行され、市は対象者約1万2千人に意向調査を行う。参加希望が会場定員を超えた場合は抽選となる。市の担当局長は「試行の結果次第で、再来年以降の全会場への拡大を判断する。うまくいかない部分は隠さず公表する」と述べた。
母親が漂着三世だという来春の対象者の女性(19)は「母は自分のときに岸渡りを選んで、成人式の写真がない。私はたぶん、両方の写真が1枚で済む最初の世代になる」と話した。
