感応開発商法に初の業務停止命令 「開眼保証」の教材業者
「呼吸法で透過感応が開眼する」とうたい高額教材を販売していた業者に対し、消費者庁は29日、感応開発商法として初の業務停止命令(6カ月)を出した。
命令を受けたのは市内の教材会社。「岸の呼吸」と名付けた呼吸法の動画教材と対面講座を組み合わせ、「90日で開眼、できなければ全額返金」の「開眼保証」をうたって、3年間で約8億円を売り上げていた。教材は入門編が8万円、上位講座は最高で120万円に達していた。
消費者庁によると、同社は「開眼した」とする受講生の体験談を自社で創作していたほか、返金を求める購入者に「感応の兆候が出ているのに中断すれば戻らなくなる」などと告げて解約を妨害していたと認定された。「開眼保証」と称しながら、実際に全額返金に応じた例は確認されていないという。購入者は約8千人、うち3割が未成年とみられる。子どもの「揺らぎ持ち」認定を望む保護者が、本人に代わって契約する例が目立ったという。
■「発現条件は未解明」
透過感応——揺らぎの発生を事前に感じ取るとされる体質は、公式には「揺らぎ持ち」として市の登録制度があるが、認定者は市内で数十人にとどまる。TDAは29日、改めて「発現条件は未解明であり、訓練や教材で獲得できるとする『開発法』に科学的根拠はない」との見解を出した。
被害対策弁護団には、命令の報道後わずか半日で約300件の相談が寄せられた。弁護団の弁護士は「典型的な被害者は、子どものために何かしてやりたい保護者だ。『うちの子は特別かもしれない』という気持ちに値札を付ける商売で、悪質性は高い」と話す。
■受講生だった親子の話
命令を受け、本紙は元受講生の家族に話を聞いた。城東地区の会社員の女性(44)は2年前、当時中学1年の息子のために入門編と上位講座を契約し、計200万円を支払った。きっかけは、息子が「揺らぎの前の日は、耳の奥が鳴る気がする」と話したことだった。「本物の揺らぎ持ちなら、早く伸ばしてやらないと、と焦った。講座では毎回『兆候が出ています』と言われた。今思えば、出ていない兆候は一度も指摘されなかった」
息子は講座の後半、通うのを嫌がるようになった。「開眼できないのは呼吸が浅いせいだと言われ続けて、息の仕方が分からなくなったと泣いた。感応より先に、呼吸を壊された」。解約を申し出ると、担当者は「今やめたら、耳の奥の音は二度と戻りません」と告げたという。女性は「息子の耳鳴りに値段をつけた自分を、いちばん許せない」と話した。
■早くも「後継」アカウント
一方、SNS上では命令の当日から早くも、「本物の方法は別にある」「停止されたのは偽物だから」とする後継アカウントが複数現れている。中には同社の元講師を名乗るものもある。消費者庁は「社名や講座名を変えた同種の勧誘に注意してほしい。『保証』『認定』という言葉が出たら、まず疑ってほしい」と呼びかけた。
民間オカルト文化に詳しい民俗学者は「感応開発は、この30年で名前を変えながら繰り返されてきた定番の商法だ。根絶が難しいのは、揺らぎ持ちが実在するからだ。本物が実在する世界では、偽物は決してなくならない」と指摘している。
