深川の漂着物、封入液体は「既知の水と同位体比が異なる」 開封は当面見送り
深川2丁目で回収された漂着物について、第三鑑定センターは29日、容器に封入された液体の非破壊分析の結果、「既知の水と同位体比が異なる」と発表した。検疫委員会は開封を当面見送る。
3点の漂着物は21日の回収以来、亀戸の第三鑑定センターの隔離区画で保管されている。センターによると、X線と中性子線による透視で、最大の容器の内部に液体約180リットルが確認された。容器壁を通した微量採取による分析の結果、液体は水に類似するものの、水素と酸素の同位体組成が「これまでに観測記録のあるどの世界線の水とも一致しない」ことが判明したという。
分析を担当した主任鑑定官は会見で、「毒性を示す成分は検出されていない。ただし、『毒性がない』と『安全』の間には距離がある。同位体比が異なる水が生体にどう振る舞うか、参照できる先行例がない」と説明した。残る2点の容器は透視の結果、一方に繊維状の内容物、もう一方はほぼ空であることが分かっている。
■検疫委「開封の利益が危険を上回らない」
センターに設置された検疫委員会は28日夜の審議で、3点すべての開封を当面見送ることを全会一致で決めた。委員会は「内容物の学術的価値は極めて高いが、現時点で開封によって得られる利益が、封入状態を失う危険を上回らない」としている。容器表面の文字列とみられる刻印については、写字による記録が完了し、国際共同研究の照合データベースに登録された。照合結果が出るまでには数カ月かかる見通しだ。
次元境界管理法は、漂着物の鑑定期限を定めていない。センターには現在、鑑定待ちの漂着物が約1,400点あり、最も古いものは19年前の回収品だという。センターは「急がば回れ、が検疫の仕事。深川の3点も、順番と安全の両方を守って進める」とし、公開展示の予定はないとした。
■世界線照合という「気の長い仕事」
同位体比は、世界線を見分ける「指紋」として使われる。透過してきた物質は、出発点の世界線ごとに水や大気の組成がわずかに異なるため、蓄積された照合データベースと突き合わせることで由来の推定が可能になる。データベースには現在、147系統の「指紋」が登録されているが、由来が推定できる漂着物は全体の3割に満たない。
センターの元鑑定官は「一致しない、という結果は落胆ではない。148番目の指紋かもしれないということだ」と話す。「照合は気の長い仕事だ。私が現役の頃に登録した指紋が、退官後に別の漂着物と一致したことがある。20年越しの答え合わせだった」
深川の3点が同一の世界線由来かどうかも、まだ確定していない。刻印の書体が3点で微妙に異なることから、複数の由来が混在する可能性も残されているという。
■現場には今も花が
規制線が解けた深川2丁目の回収現場の路上には、いまも花や飲み物を置いていく人が絶えない。近くの花店によると、「漂着物のあった場所に供えたい」と切り花を買っていく客が1日に数人いるという。誰に向けたものかは、置いた本人たちにもうまく説明できないという。
町内会は現場の電柱に「お供えは3日で片付けます」と貼り紙を出した上で、片付けた花を近くの児童公園の花壇に植え替えている。会長の男性(70)は「向こうの誰かの荷物が、うちの町に届いた。それだけのことだが、それだけのことに、みんな何か置きたくなるんでしょう」と話した。


