士道剣技、秋の五番勝負へ始動 水無瀬弦、初の都市対抗に「勝てる気がしない」
刀士の競技・士道剣技の都市対抗「秋の五番勝負」(10月3日開幕)に向け、東亰刀士会が21日、亀戸の稽古場で始動した。既報の合同訓練で「刀は抜かなかった回数で評価してください」と語った鹿目千歳(41)は今年も出場する見通しで、水無瀬流の若手・水無瀬弦(22)が都市対抗の舞台に初めて立つ。防具を着け、審判3人の「見切り」で勝敗が決まる競技だが、この日の稽古場に漂う緊張は、いつもの排除措置同行とは違う種類のものだった。
■ 開幕まで2週間、稽古場に緊張
士道剣技の都市対抗戦「秋の五番勝負」は10月3日開幕。東亰刀士会は21日、亀戸の稽古場で全体稽古を始めた。既報のとおり同競技は防具を着けて行われ、勝敗は審判3人の「見切り」で決まる。「三本目・見切り勝ち」という独特のスコア表記は解説されないまま紙面に載るのが常だが、稽古場そのものは、排除措置同行の現場とは違う張り詰め方をしていた。
■ 水無瀬弦、初の都市対抗
水無瀬流の若手・水無瀬弦(22)は、士道剣技の期待株として名前が挙がりながら、都市対抗の舞台には今回が初出場となる。既報のとおり排除措置の同行経験はまだないが、稽古試合ではベテラン格の選手にも一本を取る場面があった。稽古後、水無瀬は「正直、今も勝てる気がしない。相手はみんな、うちより長く道場にいる人たちばかりだから」と率直に語った一方、「見切りで負けても、自分の中では『抜けた』と思える一本を出したい」とも話した。
■ 鹿目千歳、「出ない」と言いながら出る
鹿目流当主の鹿目千歳(41)は、既報の連載コラム「抜かない刀」でも触れたとおり、五番勝負については毎年「出ない」と言いながら結局出場してきた。21日の稽古では若手に交じって自ら防具を着け、水無瀬とも1本を交えた。稽古後の取材に「今年もたぶん同じことになる。抜かない稽古をしている人間が、抜く競技に出るのは妙な話だが、稽古と本番は別の棚に置くものらしい」と、コラムと同じ言い回しで笑った。
■ 「昼の刀士」の別の顔
既報の09-09合同訓練では、鹿目は監視業組合との分業を「昼の刀士、夜の監視員」という言葉で語っていた。士道剣技はその「昼の刀士」がもう一つ別の顔を見せる場でもある。稽古を見守っていた東亰刀士会の関係者は「排除措置の現場では抜かないことが誇りだが、この競技場では、抜いて、当てて、見切られることが仕事になる。同じ人間の中に両方があることを、稽古のたびに思い出す」と話した。
■ 免許秋試験の合格発表も控える
既報のとおり、刀士免許の秋試験の合格発表は9月26日に予定されており、倍率は今年も20倍を超える見通し。五番勝負の開幕(10月3日)の直前に新たな有資格者が加わる形になる。東亰刀士会は「合格者の中から、来年以降の五番勝負に出てくる顔もあるはず」と期待を寄せた。
■ 監視業組合、忍競との「観客動員くらべ」も
既報のとおり刀士会と監視業組合は「昼の刀士、夜の監視員」と並び称され、士道剣技と、監視員の競技・忍競の観客動員を比べる記事が毎年紙面に載る。監視業組合東亰支部の霧生伊織(29)は21日、この日の稽古の噂を聞きつけて練習場を訪れ、「うちの夜長杯(11月)は3連覇がかかっている。士道剣技が先に始まるからといって、油断してもらっては困る」と笑いながら牽制した。稽古を終えたばかりの水無瀬は「忍競は見に行ったことがない。今度、教えてほしい」と応じ、東亰刀士会の関係者は「対抗意識と言いつつ、結局は仲がいい」と苦笑した。
■ チケット・会場の見通し
秋の五番勝負のチケットは例年、開幕1週間前をめどに発売される見通しで、東亰刀士会の広報担当は「壁上競走ほどの規模ではないが、水無瀬の初出場もあり、今年は例年より問い合わせが早い」と話す。会場は例年どおり亀戸の屋内道場を軸に、複数都市を回る形式が予定されている。
■ 遠野汀記者の視点
稽古場で水無瀬が「勝てる気がしない」と言ったとき、隣で鹿目が小さくうなずいていたのが印象に残った。抜かないことを積み重ねてきた指導者が、抜く競技に挑む若手の不安を、否定も励ましもせずただ受け止める。そういう間の取り方も、この職能の「制度で書く」流儀の一部なのだと感じた稽古初日だった。
秋の五番勝負は10月3日、亀戸で開幕する。組み合わせ・日程は近日発表の見通し。
