学生壁上競走、過去最多187校の秋 抽選会、初出場62校に安全講習
学生壁上競走の秋予選の組み合わせ抽選会が30日、亀戸で行われ、過去最多187校の対戦が決まった。予選は9月5日に開幕し、11月の決勝(亀戸第二壁面)を目指す。初出場は62校に上り、連盟は史上初めて安全講習の受講を義務づけた。
■番号入りの球を、順番に
抽選会は30日午前、亀戸の区立体育館で開かれた。壇上の箱から各校の主将が番号入りの球を引き、係員が壁一面の紙の対戦表にその場で書き込んでいく。連盟が電子抽選を導入しない理由を、担当者はこう説明する。「引いた本人が、引いた顔をする。あれを全員に見せるのが抽選です」
参加は187校で、昨秋の142校から45校増えた。予選は9月5日に湾岸と城北の2会場で始まり、10月まで各地区で行われる。決勝は11月、プロリーグと同じ亀戸第二壁面で開催される。
■学生の壁は、低い
学生の予選は、プロと同じ壁面を使わない。各地区の学校や公共施設の壁を借り、高さを8段までに制限した仮設コースで行われる。1校3人が順に登り、到達した段と、途切れずに成功した本数で競う。決勝だけが亀戸第二壁面で、それも上部3段は使わない。
連盟が発足したのは透暦44年で、当初の加盟は31校だった。長く「壁の空きを探す競技」と言われ、練習場所の確保が最大の課題だったが、近年は自治体が護岸や倉庫の壁面を時間貸しする例が増えている。連盟の担当者は「壁は余っているのに、登れる壁は足りない。この10年、ずっとその話をしています」と話す。
今年は登録校の増加に合わせ、予選会場が5会場から8会場に増えた。運営はほぼ全て各校の教員と保護者の手弁当で、連盟は初めて、会場ごとに救護担当を1人以上置くことを義務づけた。
■「汀島世代」の押し寄せ
急増の背景には、東亰RCの汀島るい選手(17)の活躍がある。同年代の選手が第19節で今季自己最高の8段目を奪った試合(既報)は配信でも大きく視聴され、連盟の登録者数は今年、中学・高校を合わせて前年比32%増えた。連盟内では、この世代を「汀島世代」と呼ぶ。
一方で、増えたのは選手だけではない。初出場62校のうち、壁上の指導経験がある教員や外部指導者を置くのは31校にとどまる。連盟の担当者は「志願者の増え方に、大人の数が追いついていない。それが講習を義務にした一番の理由です」と話す。
■「上手くなる前に、降り方を」
安全講習は2時間で、9月2日までに全62校が受講する。内容は命綱の二重確認の手順と、濡れた壁面で「登らない判断」をする基準が中心だ。壁面の含水率の測り方、判断を誰が下すかの役割分担、そして中止を申し出た選手を責めない取り決めまでが、文書化されている。
「上手くなる前に、降り方を覚えてもらいます」と担当者は言う。「壁は逃げません。今日登らなくても、来週も同じ場所にあります」
初出場校の顧問の男性(45)は、講習で配られた冊子をかばんに入れながら「今年やっと、命綱の予備が買えたんです。それまでは、切れたらその日は終わりでした」と話した。
■「どうせ全部の壁を登りに来た」
抽選で春の全国王者・城北学院との初戦を引き当てた初出場・都立枝川高校の主将(17)は、番号を引いた直後、対戦表を見上げて数秒黙り、それから笑った。「くじ運が悪いとは思いません。どうせ全部の壁を登りに来たので」
同校が壁上部を作ったのは2年前。部員9人のうち5人は今春の入部で、練習は校舎裏の高さ6メートルの外壁を使う。主将は「うちの壁は雨の日にすぐ光る。だから、登らない日をどう過ごすかは、たぶん誰より知っています」と言った。
■秋の壁、にぎわう
プロリーグも9月4日に第20節を迎える。首位・東亰RCは敵地・浪速で2位との首位攻防に臨み、学生の予選開幕はその翌日だ。連盟は初出場校の保護者向けに、観戦時の立ち入り位置を示す一枚紙を新たに配った。壁面の真下に立たないでください、という注意書きが、いちばん大きな字で刷られている。

