速報鐘方式、初の試験放送 湾岸3地区で 「二打の意味」知らぬ若年層半数
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社会

鐘方式、初の試験放送 湾岸3地区で 「二打の意味」知らぬ若年層半数

2026年(透暦52年)9月3日 (社会部・真柴湊) English

TDAと市は3日午前10時、収容所時代由来の警報伝達法「鐘方式」の試験放送を潮見・深川・砂町の湾岸3地区で初めて実施した。来年度予算での防災無線組み込みに先立つ実証で、一打は注意、二打は警戒、三打は避難を意味する。試験は二打までにとどめたが、若年層の約半数が打数の意味を知らないなど課題も浮かんだ。

■収容所の鐘、防災無線へ

鐘方式は、1970年代の収容所時代に漂着民の集団の中で自然発生的に広まった警報伝達法だ。鐘の音の数で事態の規模を伝える単純な仕組みが評価され、市とTDAは来年度予算で防災無線への正式な組み込みを要求している。3日の試験放送は、その実証として今年度内に位置づけられたもので、湾岸3地区での放送はこれが初めてとなる。

音源には、漂着物資料館が所蔵する当時の収容所の鐘の録音が使われた。一打は注意、二打は警戒、三打は避難を意味するが、3日の試験は二打までにとどめられた。市の防災担当者は「実際の避難を伴う三打までの試験は、混乱を招く恐れがあるため今回は見送った。まずは音が届くかどうかを確かめる段階です」と説明する。

潮見に住む漂着一世の男性(83)は、放送を聞いて思わず足を止めたという。「収容所にいた頃、鐘が鳴ると子どもたちを集めるのが自分の役目だった。あの音を、まさかこの歳になって、また役所の放送で聞くとは思わなかった」。男性は二打まで鳴ったところで、無意識に周囲の子どもを目で数えていた自分に気づいたと明かした。「体が忘れていなかった、ということでしょう」

■「聞こえない」高層の内廊下

試験後に市が実施したアンケートでは、複数の課題が浮かんだ。最も多かった指摘は、高層集合住宅の内廊下から「聞こえない」という回答だった。屋外に面した部屋では明瞭に聞こえた一方、廊下側に窓のない住戸や、防音性の高い新築の集合住宅では、放送に気づかなかった住民が一定数いたという。

湾岸沿いの集合住宅に住む男性(38)は「テレビをつけていたら全く気づかなかった。あとで近所の人に聞いて、ああ、あれが鐘方式かと分かった」と話す。市はこの結果を受け、集合住宅の管理組合を通じた周知の強化を検討している。

■意味を知らない世代

もう一つの課題は、打数の意味そのものが浸透していない点だ。試験放送後の街頭調査では、若年層の約半数が「一打と二打の違いが分からなかった」と回答した。鐘方式は収容所時代を知る世代には体に染みついた合図だが、その体験を持たない世代には、単なる音でしかない。

10代の生徒(15)は「鐘の音自体は聞こえたけど、何回鳴ったら何なのかは知らなかった。学校で習った記憶もない」と話した。市はこれを受け、説明カードの全戸配布と、学校の防災教育への鐘方式の追加を検討する方針を明らかにした。

■秋の防災訓練で範囲拡大へ

TDAの担当者は「音が古い記憶を呼び覚ます、という強みがある一方、知らない世代には意味が伝わらない、という弱みも同じくらい大きい。両方を踏まえて設計し直す必要がある」と述べた。次回の試験は秋の防災訓練に合わせて実施される予定で、対象地区の拡大や三打を含めた本格的な訓練とするかどうかは、3日の結果を踏まえて判断されるという。

来年度のTDA概算要求には、鐘方式の防災無線組み込みに約6億円が計上されている。設立以来最大となる総額1470億円の要求の中では小さな項目だが、担当者は「金額の大小と、住民にとっての重みは別だ」と話す。

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