鐘方式、1日付で本運用開始 高層住宅向けにアプリ連動も試験導入
TDAと市は、揺らぎ警報の伝達法「鐘方式」を10月1日付で防災無線へ正式に組み込み、本運用を開始した。9月の試験放送で浮かんだ「高層内廊下で聞こえない」「打数の意味を若年層の半数が知らない」という課題に対応するため、予報アプリ「まど番」との連動も試験的に始めている。
■ 試験放送から1カ月、本運用へ
既報のとおり、9月3日に潮見・深川・砂町の湾岸3地区で初めて試験放送された鐘方式は、10月1日付で防災無線への正式な組み込みが完了し、本運用が始まった。信号の意味は試験時と変わらず、一打は注意、二打は警戒、三打は避難。市の担当者は「試験段階で指摘された課題への対応を一通り終えたうえでの本運用開始」と説明する。
■ 高層内廊下の「聞こえない」問題への対応
9月の試験で最も多く寄せられた指摘は、高層住宅の内廊下で音が届きにくいというものだった。市はこれに対し、湾岸部の対象マンション約40棟について、共用廊下への小型スピーカー増設を10月中に順次進めるほか、スマートフォン向け予報アプリ「まど番」(既報)との連動を試験的に開始。鐘の音が鳴るタイミングに合わせ、アプリ利用者の端末に打数と意味を示す通知が届く仕組みで、当面は湾岸部の登録者約3,200人を対象とした試験運用にとどめる。
■ 「意味を知らない」若年層への教育も継続
試験放送時のアンケートで、打数の意味を知らないと答えた割合が若年層でおよそ半数に上ったことを受け、市教委は既報のとおり学校防災教育への追加を決めている。10月中に湾岸部の小中学校で順次、鐘方式の由来(収容所時代の警報伝達法)と打数の意味を学ぶ時間が設けられる予定。深川の区立小学校で防災担当を務める教員は「子どもたちは鐘の音そのものには驚かない。むしろ『昔の人はどうやって鳴らしていたのか』という歴史への関心のほうが強い」と話す。
■ 市民の受け止め
潮見橋通り商店街で雑貨店を営む住民(60代)は、「試験放送のときは何の音か分からず少し慌てたが、意味が分かればただの合図。むしろサイレンより落ち着いて聞ける」と話した。一方、湾岸部の高層マンションに住む会社員の一人は「アプリ連動は助かるが、通知を切っている人も多いはず。結局は廊下のスピーカーが頼りになると思う」と、残る課題も指摘した。
■ 防災無線の歴史に重なる
鐘方式は、既報のとおり収容施設の時代に生まれた警報伝達法で、半世紀を経て形を変えながら現代の防災無線に組み込まれた。市の防災担当者は「サイレンや合成音声の警報に慣れた世代にとっては新しく聞こえるかもしれないが、一世の方々にとっては、むしろ懐かしい音だと聞いている」と話す。岸谷タネさん(101、漂着一世)は別の機会に「収容施設にいたころ、あの鐘の音で一日の段取りが決まっていた。怖い音だった時期もあるけれど、今はもう、ただの合図に聞こえる」と語ったことがある。
■ 今後
市とTDAは、本運用開始から3カ月をめどに実際の鳴動実績と住民の反応を検証し、スピーカー増設やアプリ連動の対象地域拡大を判断する方針。試験放送時に示されていた「秋の防災訓練に合わせた範囲拡大」の判断も、この検証結果を踏まえて行われる見通しという。



