壁上競走・9月の月間MVPに汀島るい 史上最年少17歳
壁上競走リーグは30日、9月の月間MVPに東亰RCの汀島るい選手(17)を選んだと発表した。10代の受賞は史上初、17歳は歴代最年少での受賞となる。自己ベストを8段目から11段目まで塗り替え続けたシーズン終盤の伸びと、選考委員会が重んじる「試合結果とは別基準」の評価が実を結んだ。
■ 発表の経緯
壁上競走リーグは30日、9月の月間MVPに東亰RC所属の汀島るい選手(17)を選出したと発表した。リーグ広報によると、月間MVPは各節の試合結果とは別に、5人の選考委員(現役審判経験者・元選手・スポーツ記者らで構成)が「その月にもっとも競技を前に進めた選手」を無記名投票で選ぶ制度で、既報のとおり9月は10代選手の受賞が現実味を帯びていた。結果として10代での受賞は制度創設以来初めて、17歳は歴代最年少記録となった。従来の最年少記録は19歳だったという。
選考結果は30日午後、リーグ事務局が加盟8クラブに一斉通知したのち、記者向けに簡単な会見が開かれた。表彰は正式な盾ではなく、簡素な木製の額に選考理由を刻んだもので、リーグ広報は「派手な演出はしない。何を評価したかが伝わればいい」と説明した。
■ 自己ベストの階段——8から11へ
汀島選手の9月は、自己ベストの更新が競技そのものより先に紙面を賑わせる月になった。第19節終了時点で自己最高8段目だったのが、9月4〜5日の第20節終盤にまず9段目へ(既報)。11日の第21節では敗戦の中で10段目に到達し、シーズン最終節となった18日の第22節では、チームの優勝が決まった夜に自己最高11段目を記録した。3週間で3度、自己記録を書き換えたことになる。
リーグ統計担当者は「1カ月で3段の更新は、記録が残る過去10年で例がない」と話す。汀島選手が専門とする第3走は、壁面の乾き方や風向きの読みが結果を左右する区間で、選考委員の一人は「段の数字だけでなく、悪条件の日にも記録を落とさなかった安定感を評価した」とコメントした。
■ 選考は「試合結果とは別基準」
既報のとおり、リーグは月間MVPを勝敗と直結させない方針を早くから示していた。9月5日の時点でリーグ広報は「10代選手初の月間MVPは試合結果と別基準で選考される見通し」と説明しており、実際に汀島選手が自己最高を更新した第20節・第21節はいずれも所属する東亰RCが敗れた試合だった。選考委員長は会見で「勝ち負けの重みは順位表がすでに背負っている。この賞は、順位表に出ない伸びを見るためにある」と述べ、汀島選手が敗戦の夜に記録を更新し続けたことをむしろ加点材料に挙げた。
一方で、東亰RCは18日の最終節を制して勝点47でシーズン優勝を果たしており、チームの結果と個人の伸びが同じ月に重なったことについて選考委員長は「重なったのは巡り合わせで、選考の基準に優勝は入っていない」と念を押した。
■ 本人の言葉
汀島選手は会見で「正直、賞のことは考えていなかった。壁は昨日までの壁じゃないので。今日の壁と仲良くするだけです、というのをずっと繰り返していたら、いつのまにか段が増えていた」と話した。3週連続の自己ベスト更新について聞かれると、「9段目のときは嬉しかったけど、10段目のときはもう『次』のことを考えていた。11段目は、優勝が決まった夜だったので、正直どっちで泣いたのか自分でも分からない」と笑った。
妹が湾岸第三中の合唱団で「岸の子守唄」を歌ったこと(既報)にも触れ、「妹の本番を見に行けなかった分、私は壁で頑張るしかないと思っていた。次に会ったら、この額を見せます」と語った。
■ チームと関係者
東亰RCの担当コーチは「1カ月で3段の更新は、こちらが驚くくらいだった。本人は淡々としているが、練習量は誰よりも増えていた」と振り返る。チームメートの一人は「表彰式でも普段と変わらない顔をしていて、ああ、いつもの汀島だな、と思った」と話した。
リーグ広報は選考結果の発表にあわせ、「試合結果と選手個人の伸びの両方を、これからも別々に評価していきたい」とコメントし、10月以降もシーズンオフ中の個人記録に注目していく姿勢を示した。
■ 史上最年少の重み
制度創設からこれまでの月間MVPは、いずれも20代以上の選手が受賞してきた。リーグ関係者によると、10代選手の受賞候補が選考委員会で本格的に議論されたのは今回が初めてで、「年齢を理由に外す・入れるという議論はしなかった」という。汀島選手自身は年齢について問われ、「早いとか遅いとかは、あとで誰かが決めることだと思う。今は次の段のことしか考えていない」と答えた。
■ シーズンオフ、そしてアニメへ
壁上競走は既報のとおり9月18日の第22節を最終節としてシーズンを終えており、次シーズンは来春の開幕まで一区切りとなる。汀島選手をモデルとされるテレビアニメ「壁の上のルイ」は来春に第2期の放送を予定しており、既報のキービジュアル公開時にも汀島選手は「今のルイならちょっとだけ追いつけそう」と話していた。今回の11段目到達で、アニメの主人公が第2期で描く「9段目」を実際の記録が上回ったことになる。汀島選手は「追いつくとか追い越すとか、あまり考えないようにしています。向こうはアニメの話、こっちは壁の話なので」と話し、オフシーズンも壁面での自主練習を続ける考えを示した。
