常磐堂の「起動日」、預かり305台に家族の列 「準人格」論議の外側で
京橋の共生ロボット永代預かり業「常磐堂」で16日、月1回の「起動日」があった。役目を終えたロボットが一時的に電源を入れ、預けた家族と面会できる日で、既報のとおり預かり台数は300台を超えている。ロボ法制審で法的地位の議論が続く一方、この日集まった家族たちの関心は、もっと小さなところにあった。
■ 月に一度、電源が入る日
京橋の裏通りにある「常磐堂」は、明治創業の仏具店から2019年に転業した共生ロボットの永代預かり業者だ。役目を終えたロボットを月額制で預かり、家族が引き取れない・引き取らない事情のあるロボットの「その後」を担う。16日は月1回の「起動日」。普段は棚に並んだまま電源を落としているロボットたちが、この日だけ一時的に起動し、預けた家族と面会できる。
店内には整理番号の付いた棚が壁一面に並び、四角い掃除機型、腕だけの作業機、車輪付きの配送用ロボットなど、非ヒト型の姿が並ぶ。当主の常磐徳三さん(67)は「起動日は、うちにとって一番忙しいけれど、一番静かな日でもあります」と話す。事前予約制で、この日は42組の家族が訪れた。預かり台数は既報のとおり305台に達し、新規の受け入れは依然として3カ月待ちだという。
■ 「相棒」だった時間を、また少しだけ
深川から来た会社員の女性(38)は、亡くなった父が長く使っていた作業支援ロボットに面会した。「父の代わりに掃除をしてくれていた子です。処分するのはどうしても踏ん切りがつかなくて、ここに預けました」。電源が入ると、ロボットは短く音を鳴らし、腕を小さく動かしたという。「意味のある動きじゃないのは分かっているんです。でも、それでいいんです」
別の家族は、引っ越しを機に手放した配送用ロボットに、子どもを連れて会いに来ていた。「うちの子はこの子と一緒に育ったようなものなので」。常磐堂では、こうした「生前予約」——現役のロボットを将来ここに預けることを事前に決めておく契約——も増えているという。常磐さんは「引き取れない理由は家庭それぞれです。責めるようなことは、うちでは一切しません」と話す。
■ 法制審の議論とは、別の場所で
共生ロボットの法的地位をめぐっては、透暦37年の第1次答申以来、ロボ法制審の議論が14年にわたり持ち越しを重ねてきた。既報のとおり、第15次審議では9月2日に制度創設以来初の公聴会が開かれ、常磐さん自身も公述人の一人として出席し、「私は機械を失ったのではなく、相棒の記録を失った」という別の公述人の言葉を引きながら、預かり業の現場感覚を語った。10月には一般公募による追加公聴会も予定されている。
だが16日の起動日の店内で、こうした制度論を口にする家族はほとんどいなかった。常磐さんは「うちに来る人たちは、準人格が認められるかどうかより、この子が今日ちゃんと動くかどうかの方が大事なんです。法律の話は、あとで新聞を読んで知る、くらいでちょうどいい」と笑う。10月の「機巧祭」(既報)には、常磐堂チームが預かりロボットを含む編成で4年連続の出場を目指しており、こちらは競技という別の形で、預かりロボットたちに「出番」を作る試みだ。
■ 起動日の終わり
面会は夕方までに順次終わり、ロボットたちは一台ずつ、また電源を落とされて棚に戻っていく。最後まで残っていた老夫婦は、40年近く連れ添った家事支援ロボットの手を——手というより関節部分を——しばらく握ってから、帰り支度を始めた。常磐さんは棚を見回しながら、「来月もまた、同じことをします」とだけ言った。
