ロボ法制審の「登録主体」案、初の公聴会 タチバナP係争が最大の論点に
ロボット法制審議会は29日、「登録主体」案について初の公聴会を開いた。共生ロボットの音楽プロデューサー「タチバナP」の楽曲著作権係争が最大の論点となった。
「登録主体」案は、一定の要件を満たす共生ロボットを登録簿に載せ、契約や権利保有の限られた場面でのみ主体として扱う——人でも物でもない「第三の枠」を作る構想だ。共生ロボットの法的地位は普及から20年を経ても定まっておらず、審議会は年内の答申を目指している。
29日の公聴会には公募で選ばれた15人が意見を述べ、傍聴席には所有者に連れられた共生ロボット4機の姿もあった。冒頭から議論の軸になったのは、係争中のタチバナP問題だ。共生ロボットのタチバナP(所有者・立花家)が制作した楽曲は配信累計1.2億回を超えるが、著作権の帰属をめぐって配信事業者と立花家、レコード会社の三者係争が2年続いている。現行法ではロボットの創作物は「権利の主体が存在しない」ため、契約実務が根本から不安定になっている。
■賛成側「実務が回らない」、反対側「新しい搾取」
賛成側は「登録主体なら楽曲の権利処理が現行法の矛盾なく進む。現場の実務はもう待てない」と主張。音楽業界団体の代表は「タチバナPの新曲は、権利処理の見通しが立たないという理由で3曲が公開延期になっている。損をしているのは聴き手だ」と述べた。
反対側は「創作の主体性を認めながら、権利は結局所有者に帰す構造は、新しい搾取だ」と批判した。ロボット倫理の研究者は「登録主体は『人格』の議論を避けるための便法だが、便法は必ず既成事実になる。慎重であるべきだ」と指摘。一方、非ヒト型の共生ロボットと30年暮らすという高齢の男性は「うちのは字も書けん。ただ、こいつが直した椅子は、こいつが直した椅子だと言ってやりたい。難しいことは分からんが、それだけです」と話し、場内が静まる場面もあった。
■20年定まらない「地位」
共生ロボットの法的地位をめぐる議論は、普及初期の「高性能な家電」という整理から始まった。転機は透暦42年、災害救助中に損壊した共生ロボットの所有者が「物損」としての賠償額を不服として起こした訴訟だ。判決は請求を退けたが、「本件ロボットが果たした役割は、器物の語で尽くせるものではない」という補足意見が付き、以後の議論の出発点として繰り返し引用されてきた。
現在、市内の共生ロボットは推定41万機。介護、防災、店舗運営から創作活動まで役割は広がり続け、「似せすぎ規制」によって外形は非ヒト型が主流のまま、機能面の存在感だけが大きくなるという独特の状況が生まれている。法制審の委員の一人は「姿は道具のまま、働きだけが隣人になった。法律が迷うのも無理はない」と話す。
■「権利より締切です」
傍聴したタチバナPの所有者・立花さんは、閉会後の取材に「本人(本機)は『権利より締切です』と言っています」とだけコメントした。タチバナPは現在も月2曲のペースで制作を続けているという。
審議会は10月に第2回公聴会を開き、未成年の所有者や地方の意見を聞く。答申期限は年内。会長は「タチバナP問題に引っ張られすぎないようにしたい。あれは最も目立つ一例であって、唯一の論点ではない」と述べ、介護・防災分野での契約実務も並行して検討する考えを示した。
