号令なしの午後7時 「秋の窓の日」初の統一点灯、潮見橋に灯りの列
湾岸発の新風習「秋の窓の日」の2日夜、発祥の地とされる潮見橋通り商店街で初めての「統一点灯」が行われた。といっても、号令も合図もない。「だいたい7時」に、それぞれの店が、それぞれの窓に灯りを置く——それだけのことのために、日暮れの商店街は歩道が埋まる人出になった。
■フライングも風習のうち
午後6時40分、口開けはやはり金物店だった。呼びかけが始まる前から勝手に灯りを出していた主人(71)は、今年も20分早い。「フライングも風習のうちです。風習ってのは、きちんとやらない部分まで含めて風習なんですよ」
7時が近づくと、灯りは通りを不揃いに進んでいった。青果店はレジ横の小窓に電池式のランタンをひとつ。喫茶店は2階の窓に蝋燭を三つ。理事長(58)は自店の窓に灯りを置いてから、通りを見渡して満足そうに言った。「時計はばらばらでいい。だいたい7時、が、うちの商店街の正確さです」
■消える灯りのほうが
歩道は家族連れと仕事帰りで埋まり、湾岸モノレールは検討していた臨時増発を2本実施した。見物の作法は、まだ誰も知らない。立ち止まる人、写真を撮る人、ただ通り過ぎながら数える人。
喫茶店の蝋燭がひとつ、風で消えた。連れられた男の子が「消えた」と声を上げると、店主は急がずに出てきて点け直した。「また点ければいいんです。それに、消えるかもしれない灯りのほうが、見てもらえるんですよ」
由来を尋ねる客に、理事長は今夜も首をかしげてみせた。「さあ。夏に出しそびれた店の敗者復活だとも、記念日の週に岸へ灯りを向けるんだとも言います。確かなのは、おととし、勝手に始めた誰かがいたことだけです」
■岸のある方角
商店街の外れまで歩くと、呼びかけの範囲ではないはずの住宅の窓にも、ぽつり、ぽつりと灯りがあった。アパート2階の窓辺に電球を置いた学生(20)は言う。「実家が湾岸の島のほうなんです。帰らないかわりに、こっちの窓に点けとくんです。理屈は、自分でもよく分かりません」
灯りの列は、岸のある方角で少しだけ密になっていた——ように見えた。気のせいかもしれない。TDAの透過指数は、この夜の湾岸は「低」。7日には漂着記念日が控える。窓は、もう少しのあいだ、灯りの置き場所であり続ける。

