第2窓「機構の海」、二つの塔が初めて「鳴き交わす」 23日未明、短時間の再開口で
湾岸倉庫街の第2定常窓「機構の海」(第19系統)が23日未明、17日の再開口以来6日ぶりに短時間開いた。既報のとおり17日に一つから二つに分かれた塔状構造物のあいだで、金属音による「鳴き交わし」とみられる現象が初めて観測された。次元調査課は「意思疎通と断定できる材料はない」と慎重な姿勢を崩していない。
■ 6日ぶり、19分間の開口
次元調査課によると、第2窓「機構の海」は23日午前3時41分から19分間、既報の17日以来6日ぶりに開いた。開口時間は既報の過去最長53時間とは比べものにならないほど短かったが、夜勤の窓番2人が窓室に詰めており、開口の一部始終を記録することができた。窓の向こうでは、17日の観測で初めて確認された二つの塔状構造物が、これまでと変わらず並んで立っていることがまず確認された。
■ 金属音が「呼応」するように
今回の開口で新たに観測されたのが、二つの塔から交互に発せられる低い金属音だった。夜勤に入っていた窓番の一人は「片方が鳴ると、少し間を置いてもう片方が似た調子で鳴る。それが何度か繰り返された。まるで呼び合っているように聞こえたが、そう聞こえるように自分の耳が勝手に処理しているだけかもしれない」と話す。次元調査課はこの現象を「鳴き交わし」と仮称し、録音記録を残したうえで音響解析にかける方針という。既報のとおり第2窓ではこれまでも自己修復する機械の群体が観測されており、周期的な金属音自体は珍しくないが、二つの発生源が交互に鳴る形が確認されたのは今回が初めて。
■ 「意思疎通」の判断は時期尚早
戸田輪記者の取材に対し、次元調査課の担当者は「音が交互に出ているという事実と、それが意思疎通であるという解釈のあいだには大きな距離がある。今の段階でそこを結びつけるのは早すぎる」と繰り返した。五原則5「未解明の維持」に照らし、次元調査課は今回の現象についても機序や意味を断定しない方針を明言している。担当者は「機構体に感情や意図があるのかどうかという問いに、今の観測技術で答えは出せない。出せないことを、出せないと言い続けるのが仕事だ」と述べた。
■ 塔、姿に変化なし
音以外の観測では、二つの塔の高さ・形状に既報の17日時点からの変化は確認されなかった。金属音に合わせて、片方の塔の表面をわずかな光の帯が上へ移動する様子も記録されており、これも次回以降の開口で再現性が確認できるかが焦点になるという。今回の開口では窓漂着物は回収されなかった。
■ 窓番の日誌から
戸田記者が閲覧を許された窓番日誌の一節には、「三時四十一分、開口。四時、片方が鳴る。少し置いてもう片方。四時十八分まで、四往復。湯呑みの中の茶が、鳴るたびにわずかに揺れた」と記されていた。次元調査課は「日誌の一節を紙面で紹介するのは初めてではないが、湯呑みの茶が揺れたという記述は、装置の数値には残らない種類の記録として貴重だ」とコメントしている。
■ 灯窓茶房の反応
既報の民間喫茶店「灯窓茶房」の店主・宮井朔(38)は、第1窓に隣接する店から見える第2窓側の空を気にかけている常連客がいたと話す。「灯しの街の窓を見に来て、機構の海の話で盛り上がって帰るお客さんもいる。うちの店はどの窓の話をしてもいい場所にしたい」。既報の模倣品問題への対応として焼き印の徹底を続ける同店だが、23日は特段の混乱もなく通常営業だった。
■ 今後の観測
次元調査課は今後の開口を待って、音響データの再現性を確認する方針。同課は「一度限りの現象なのか、二つの塔が生まれてから続く定常的な性質なのか、まだ判断できる材料がない」としており、第31系統「隣の世界」や第5窓「剣の国」との関係と同様、急いで意味づけをしない姿勢を今回も貫いている。
