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次元調査

第2窓「機構の海」、鳴き交わしに新周期 群体が稼働以来最大の塔状構造

2026年(透暦52年)9月9日 (科学部・次元調査・戸田輪) English

©東亰新報

湾岸倉庫街の第2定常窓で、自己修復する機械の群体とみられる存在が稼働以来最大規模の塔状構造物を形成しているのが観測された。あわせて金属音の「鳴き交わし」に、複数の群体が音を合わせる新しい同期パターンが初めて確認された。次元調査課は9日、記録の解析を進めていると発表した一方、原因はなお分からないとしている。

■稼働から2年、初めての大型構造

湾岸倉庫街・第4号倉庫の裏手にある第2定常窓は、2024年11月の稼働以来、人の気配がまったくない世界を映し続けてきた。第19系統――次元調査課の仮称「機構の海」で紙面でもこの通称を使う――では、自己修復する機械とみられる群体が、都市ほどの規模の構造物を組んでは崩す様子が繰り返し観測されている。次元調査課は9日、7日深夜から8日未明にかけての観測で、稼働以来最大規模とみられる塔状の構造物が形成されたことを明らかにした。

観測記録によると、構造物は窓室から見て奥行きのある一角に、数時間をかけて積み上がった。高さは窓越しの目算で「これまでの構造物の3倍前後」とみられ、次元調査課は今後、映像記録の中の比較対象をもとに算出を進めるとしている。塔の輪郭は一定でなく、観測の間にも表面のパネルのようなものが絶えず組み替わっていたという。「積み木を、同じ場所で同時に何十カ所も組み直しているようだった」。当直だった窓番(29)はそう振り返る。「崩れる音はしない。外れる音と、はまる音だけが続く」

■系統19、これまでの記録

第19系統は稼働開始から間もなく2年を迎える。次元調査課によると、これまで観測された構造物は最大でも街区一つ分程度の規模にとどまり、組み上がっては数日のうちに解体される周期を繰り返してきた。人間や人間に類する生物の姿は一度も確認されておらず、群体そのものが単一の生命体なのか、無数の個体の集まりなのかも未確認のままだという。TDAの火浦誠局長は9日の定例会見で「これまでの2年間で積み上げてきた観測の蓄積があったからこそ、今回の変化を『これまでと違う』と言い切れる。地道な記録の価値を、あらためて感じている」と述べ、次元調査課の観測体制そのものを評価する発言をした。

■鳴き交わし、複数の群体で初めて同期

第2窓の観測ではこれまでも、金属音の「鳴き交わし」と呼ばれる現象が知られてきた。個々の群体が発するとみられる甲高い音が一定の間隔で断続的に響く現象で、その周期に規則性があることは以前から把握されていたが、発生源や意味は分かっていない。次元調査課によると、今回の観測では複数の群体がほぼ同時に音を発する「同期」のパターンが初めて確認されたという。従来は個々の群体がばらばらの周期で鳴いていたが、塔状構造物の形成が進むにつれ、周辺の群体が音を合わせるように鳴く場面が繰り返し記録された。

「呼びかけているのか、単に同じ処理をしているだけで音がそろって聞こえるのか、判断する材料がない」と次元調査課の担当者は説明する。「群体に個体としての意思があるのかどうかも、この系統では未確認のままだ。今回の観測は、これまでと違う挙動が記録されたという事実にとどまる」。次元調査課はこの日、記録した音響データの解析を専門の研究機関に依頼したことも明らかにした。結果が出るまでには数カ月かかる見通しという。

■窓室の記録、湯呑みは揺れず

第4窓「巨獣の原野」では既報のとおり巨獣の歩みで窓室の湯呑みが動くことがあるが、第2窓ではこれまで振動の類が観測されたことは一度もない。今回も窓室内に変化はなく、窓番は「向こうの出来事が、こちらの空気を震わせることは今のところない」と話す。窓は9日午前の時点でなお開いたままで、次元調査課によると、これほど長く開き続けているのも稀だという。前日には第5窓で3時間20分という稼働以来最長の開口が観測されたばかりで(既報)、課内では「窓ごとの開口の長さに、何らかの傾向が生まれているのかもしれない」との声も出ているが、これも仮説の域を出ないとしている。

観測映像の確認を依頼された建築系の研究者は「地球上の建築の理屈では説明がつかない組み方をしている部分がある。ただし『理屈がつかない』ということ自体が発見であって、答えではない」とコメントを寄せた。次元調査課はこうした外部意見も記録として残す一方、「向こうの世界に人間の理屈を当てはめて分かった気になるのが一番危険だ」との立場を崩していない。

■倫理論争、年内の検討会へ

既報のとおり、次元調査課は「見ていていいのか」という倫理論争と、長時間・高密度の観測への対応方針を議題とする外部有識者検討会を年内に新設する方針を示している。今回の第2窓の観測結果は、第5窓の長時間開口とあわせて検討会の議題に加わる見通しだ。次元調査課の担当者は「観測技術が上がるほど、見えるものが増える。見えるものが増えるほど、見ていいのかという問いも重くなる。順番を間違えたくない」と述べた。

■今後

第2窓は9日午前の時点でなお開いており、次元調査課は観測を継続している。塔状構造物がこの後どうなるか――崩れるのか、さらに積み上がるのか――は「予測できないし、予測しようとも思わない」(次元調査課)という。窓グッズを扱う民間業者からは、既に「機構の海」をモチーフにした新商品の相談が寄せられているというが、次元調査課は画像の公式な扱いを検討中で、正式な公開時期は未定としている。「向こうに理由があるのかどうかさえ分からないまま、それでも記録を取り続ける人たちがいる。それがこの窓の仕事なのだと、あらためて思った」と担当記者は結んだ。

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