第5窓「剣の国」の声、録音を一部公開 岸浦汐さん「子守唄の節回しに似ている気もする」
TDA次元調査課は2日、既報の第5窓「剣の国」で9月30日未明に録音された「声のような音」について、分析前の原音源の一部を報道機関向けに公開した。音を聞いた「岸の子守唄」採譜者の岸浦汐さん(74)は「節回しに似ている気もする」としつつ、断定は避けた。次元調査課は「声だと決める材料はない」という立場を崩していない。
■ 音源、一部公開へ
TDA次元調査課は2日、亀戸・第三鑑定センター裏の第5窓「剣の国」で9月30日未明に録音された「声のような音」について、専門機関への正式な分析結果が出る前の原音源を、約3秒間に限って報道機関向けに公開した。これまでは課内でのみ再生され、波形の概要だけが既報で伝えられてきたもの。担当者は「分析の予断を避けるため公開は控えてきたが、憶測だけが先に広がるより、まず実際に聞いてもらう段階に進めることにした」と説明した。音源は現時点で一般配布の予定はなく、報道機関による試聴のみとしている。
■ 「子守唄の節回しに似ている気もする」
公開に先立つ9月30日のうちに、次元調査課は専門家ではない立場からの第一印象も参考にしたいとして、非公式に数人へ音源を聞かせていた。そのひとりが、音楽教師で「岸の子守唄」の採譜者である岸浦汐さん(74、漂着一世)だった。岸浦さんは2日、「断定はできないけれど、節回し、というか、音の上がり下がりのあいだの取り方が、うちの子守唄に少し似ている気もする」と話した。ただし「似ている、で終わらせていい話ではないとも思う。似ているものは、世の中にいくらでもある」と、すぐに自ら言葉を継いだ。同じ音源を聞いた最高齢の漂着一世・岸谷タネさん(101)も「歌そのものではない気がするけれど、歌に近い何か、とは思う」と、岸浦さんに近い感想を次元調査課経由で寄せている。二人とも、具体的にどの箇所が似ているかの指摘は避けた。
■ TDAは「断定できる材料はない」の立場を維持
次元調査課はあくまで、「発声器官を持つ生物の音である可能性は排除できないが、人の声、ましてや歌と断定できる材料はない」という既報の立場を崩していない。担当者は2日の説明で「岸浦さんや岸谷さんの感想は、専門家ではない方の第一印象として尊重するが、分析の結論を先取りするものではない。似ていると感じることと、似ていると証明されることは別の棚にある」と釘を刺した。一方で、録音を国内の音響・音楽学の専門機関2カ所に正式に送付したことも明らかにし、従来の波形解析に加えて「旋律的な構造があるかどうか」という、これまでより踏み込んだ分析項目を追加したことを認めた。
■ 第7系統「灯しの街」との関係、なお材料なし
第5窓では、既報のとおり第7系統「灯しの街」の「式」の札に似た札を持つ行列がたびたび観測されており、両系統の関係は検討課題として温存されてきた。今回の音についても、担当者は「灯しの街の観測では、これまで人の声そのものを収録した例がなく、比べる材料自体がない」と繰り返した。既報の窓漂着物2点(留め具・編み紐)の鑑定が「未特定」のまま止まっていることとあわせ、ある窓番は第5窓について「分からないことが、少しずつ輪郭を持ち始めている窓だと思う」と日誌に記した一文を今回明らかにしている。
■ 検討会座長「期待したい気持ちと、検証は、分けて進めたい」
11月上旬に初会合が予定される外部有識者検討会の座長に内定している梶浦悦子・湾洋大学教授は、次元調査課を通じて「岸浦さんたちの受け止めは、とても人間らしい反応で、否定したくない。ただ、期待したい気持ちと、ひとつずつ確かめていく検証作業は、ここで一度分けて進めたい」とのコメントを寄せた。既報のとおり、第2窓の塔の分裂、第3窓「見張り」の境界接近、第4窓の集落移動に続き、今回の音声記録が検討会の4件目の議題として正式に加わる。
■ 窓の近くでは静かな熱気も
灯窓茶房(第1窓隣接の喫茶店)の店主・宮井朔さんによると、2日はうちの窓とは別系統の話題にもかかわらず、来店客の間で音源公開の話が出たという。「第1窓のお客さんも、他の窓の話をしに来るんです。うちは灯しの街しか見えないけれど、窓そのものが好きな人が集まる場所になっている」と話す。次元調査課は、今回のような非公式な感想募集が商業的な憶測や模倣品(既報の「式」の札を模したキーホルダーなど)の拡散につながらないよう、公開範囲は当面限定的にとどめる方針も示した。
■ 今後
専門機関による分析結果が出るまでには、既報の第2窓の音響解析と同様、数カ月を要する見通し。それまでの間、次元調査課は「向こうがこちらを認識している証拠はない」という基本姿勢を変えない方針だが、担当者は「専門家ではない方の感想を先に公開したのは、世の中の受け止め方そのものも、この窓の記録の一部だと考えたからだ」とも述べ、調査の進め方そのものに透明性を持たせたい考えをにじませた。







