秋予選開幕 豊洲工業が枝川高に競り勝つ 新設部、目標の「全員降壇」は達成
学生壁上競走の秋予選が5日午前、亀戸第二壁面で開幕し、開幕第1試合は昨秋準優勝の私立豊洲工業が、初出場の都立枝川高校を4段2連-2段3連で下した。部員9人・創部2年の枝川高は勝利こそ逃したが、顧問が事前に掲げた「9人全員が安全に降りてくる」という目標は達成した。
■過去最多187校、開幕第1試合から緊張
学生壁上競走の秋予選が5日午前9時、亀戸第二壁面で開幕した。参加は既報のとおり過去最多の187校で、初出場62校のうち最初に登壇したのが都立枝川高校だった。開幕第1試合の相手は昨秋準優勝の私立豊洲工業で、結果は4段2連-2段3連。実力差のある組み合わせとされていたが、枝川高は2段目まで先行する場面もあり、豊洲工業の顧問は試合後、「様子見をするつもりはないと言いましたが、正直、序盤は面食らいました」と認めた。
第4レーンに設けられた開幕戦は、午前9時の時点で観客席の大半が両校の関係者と、他校からの視察を兼ねた部員で埋まった。枝川高の1番手が登壇すると、旧東雲水門の壁面とは幅も高さも違う本番の壁に、しばらく手が止まる場面もあったという。それでも2段目までは互角の展開が続き、審判席からも「初出場にはとても見えない滑り出し」との声が上がった。豊洲工業が突き放したのは3段目以降で、経験に裏打ちされた安定した登坂で着実に差を広げた。
■「9人全員が安全に降りてくる」という目標
枝川高は部員9人・創部2年で、既報のとおり練習場は本番より低く狭い旧東雲水門の壁面に限られ、枝川一帯の夜間規制のため練習は日没前に切り上げてきた。顧問(41、競技経験なし)は開幕前、「勝つことより、9人全員が安全に降りてくることが目標です」と語っていたが、試合後は「その目標は達成できました。まずはそこからです」と静かに話した。9人のうち途中棄権や滑落による中断はなく、全員が命綱の手順どおりに降壇した。
3日の公開練習「壁慣らし」に参加した枝川高の部員の一人は、「本番の壁は練習の壁より広くて、正直こわかったです。でも、思ったより自分の手が動きました」と振り返った。連盟が今季から義務づけた安全講習について、顧問は「型として残る、という話を聞いていましたが、今日それを実感しました」と話している。試合終了後、両校の選手は本番と同じ隊列で並び、壁の下で一礼を交わした。豊洲工業の主将は「初出場だからと侮った部分が、うちのどこかにあったと思います。次に会うときは、そういう気の緩みごと直したい」と話した。
■観客席には保護者と地元住民も
会場には枝川高の保護者や地元住民の姿も目立ち、旧東雲水門での練習を見守ってきた近隣住民の一人は「夜の練習を切り上げて帰る生徒たちを何度も見てきたので、今日はどうしても応援したくなった」と話した。枝川高の顧問は試合後、選手一人ひとりに声をかけて回り、「今日の壁を、来年もう一度見せてほしい」と伝えたという。創部2年での初出場という節目もあり、学校関係者からは「勝敗より、まず立った、という事実が大きい」との声も聞かれた。
■予選は11月決勝まで、枝川高は次戦へ
豊洲工業は開幕戦を勝利で終えたものの、顧問は「うちの登り方ができた試合ではなかった。次までに立て直します」と課題を口にした。予選は187校の総当たりに近い形で11月の決勝(亀戸第二壁面)まで続き、枝川高の次戦の日程は近く発表される。学生連盟の担当者は「初出場校がこれだけ増えた年に、大きな事故なく開幕できたことが何よりです」と述べ、安全講習の義務化が功を奏した形になったとの見方を示した。前夜の壁上競走リーグ第20節で17歳の汀島るいが自己最高の9段目に到達したことにも触れ、「学生の選手たちにとって、一番身近な目標がまた一段上がった夜と朝が続いた」と話している。