「岸の子守唄」本番前、最後の合同練習 37人、意味知らぬまま声を合わせる
漂着記念日(7日)の式典で初めて公の場で歌われる「岸の子守唄」の合同練習が5日、湾岸市民会館で行われた。既報のとおり湾岸第三中を中心とする37人の合唱団による本番前最後の全体練習で、採譜者の音楽教師・岸浦汐さん(74)が口移しで最終確認をした。歌詞の意味は式典でも読み上げられない方針が改めて確認された。
■本番と同じ隊列で、通し稽古
漂着記念日式典まで残り2日となった5日午後、湾岸市民会館の練習室で「岸の子守唄」合唱団の最後の合同練習が行われた。既報のとおり合唱団は湾岸第三中を中心とするハーフの生徒28人と、公募で選ばれた漂着系以外の生徒9人を合わせた計37人。この日は本番と同じ隊列を組み、全13番を通して歌う稽古が2回行われた。採譜者の岸浦汐さんは、これまでどおり発音記号や対訳のプリントを配らず、自ら声に出して手本を示し、生徒が耳で聞き取って追う形式を最後まで貫いた。
練習室には既報の式典運営を担う市民協働課の職員も同席し、本番の入場・退場の動線を合わせて確認した。1回目の通し稽古では数カ所で声が重なり合う場面があったが、2回目にはほぼ一致し、指導にあたった岸浦さんは珍しく小さくうなずいたという。生徒の一人は「1回目より2回目の方が、なぜか声が出しやすかった。理由は分からないけど、隣の子と息が合った気がした」と話した。
■一世の見学者も、涙ぐむ場面
この日の練習には、7日の式典に「聴く係」として参列する予定の漂着一世・岸谷タネさん(101、既報)が体調確認を兼ねて短時間立ち会った。岸谷さんは車いすで練習室の後方から聴き、終盤には目元を押さえる場面もあったという。付き添った送迎ボランティアの朝倉岬さん(20、既報)は「岸谷さんが涙ぐんだのを見て、生徒たちの表情も変わったのが分かりました」と振り返った。岸谷さん本人は練習後、「歌えないが、聞こえると気持ちが動く。それだけは50年経っても変わりません」と短く語ったという。
■「歌は、話ではないから」
岸浦さんは練習の合間、「歌詞の意味は、今日も教えません。歌は、話ではないから」と生徒に語りかけた。既報のとおり歌詞は全13番のうち「海」「窓」「帰り道」の3語のみ意味が推定されているにとどまり、報告書も「不明」ではなく「未詳」の語を採用している。式典でも対訳は読み上げられない方針で、これは一世の選択によるものだと既報で伝えられている。合唱団に参加する生徒の一人は「最初は変な感じがしましたが、今は意味を知らないまま歌う方が、なんだかしっくりきます」と話した。
■汀島るいの妹も、姉の話題の中で
合唱団には、既報のとおり壁上競走選手・汀島るい(17)の妹が在籍している。前日4日夜、姉が第20節で自己最高の9段目に到達しつつも敗れたことは合唱団の間でも話題になったといい、妹は練習後、「姉は結果には触れないでほしいという人なので、今日は普通に歌に集中しました」と短く話した。
■当日は正午開始、天候への備えも確認
式典は7日正午、岸浜公園で開始し、冒頭に子守唄が披露される。この日の練習では、当日雨天だった場合の待機場所や、湾岸で並行する大潮集中観測の機材配置を踏まえた導線も改めて確認された。岸浦さんは練習の締めくくりに、「あとは本番だけです。今日の声が、一番よかったと思います」と生徒たちに伝えた。原譜は既報のとおり岸浦さんの自宅仏壇に保管されており、公開は「死後」とする方針に変わりはないという。


