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「開眼合宿」の20代2人が行方不明 山中の施設は無人、団体は連絡不能

2026年(透暦52年)9月1日 (社会部・真柴湊) English

「透過感応が開眼する」とうたう合宿に参加した20代の男女2人と、家族が連絡を取れなくなっていることが1日、分かった。合宿は自己啓発団体「還り岸の会」が都外西部の山中の借家で開いていたもので、警察が8月末に現地を確認した際、建物は無人だった。団体代表とも連絡が取れておらず、警察は2人を行方不明者として捜索するとともに、特定商取引法違反の疑いも視野に団体の実態を調べている。

■十日間の「最終課程」

家族らによると、2人は8月中旬から10日間の日程で、団体が「最終課程」と称する合宿に参加していた。参加費は68万円。集合場所は市内の私鉄駅で、そこから団体の用意した車で山中の借家へ向かう方式だったという。

家族が最後に連絡を受けたのは8月18日。「電波が悪いので、しばらく返せません」という短い連絡が最後になった。合宿の終了予定日を過ぎても帰宅せず、家族が26日と28日に相次いで警察へ届け出た。

警察が8月末に現地を確認したところ、建物は無人だった。家主によると、借家の契約は8月末で切れており、室内は清掃のうえ引き払われていた。残されていたのは、雨戸をすべて外された窓と、窓の数だけ畳に置かれた小さな燭台だけだったという。

■「最後だけは出る」

2人のうち1人は、参加前の7月下旬、市消費生活センターに解約の相談をしていた。相談記録には「初級と中級で計40万円を支払い済み。最終課程の68万円は高いと感じている」という趣旨の記載がある。センターは書面での解除通知の出し方を案内したが、その後の相談はなかった。

家族には「最後だけは出る。ここまで来て途中でやめたら、払った分が全部無駄になるから」と告げて向かったという。母親の手元には、玄関の靴箱の上に残されていた置き手紙がある。「次に会うときは、視える側になっています」

もう1人の兄(31)は「妹は去年、勤め先が変わってから、視える人の動画をよく見るようになった。止めたことはあります。でも、止め方が下手でした。『そんなの嘘だ』しか言えなかった」と話した。

■動画とセミナー、段階制の課金

「還り岸の会」は数年前から動画やセミナーで会員を集めていた。関係者によると、無料の動画から入り、初級・中級の講座、宿泊型の課程へと段階的に進む構成で、段階が上がるごとに参加費が上がる。会員向けの合宿は今年に入って少なくとも4回開かれたとみられる。

団体名にある「岸へ還る」という言葉について、TDAは「透過感応の発現条件は未解明であり、いかなる『開発法』にも科学的根拠はない」とする従来の見解を改めて示した上で、こう述べた。「団体が主張する『岸へ還る』という概念は、当局の観測事実のいずれとも対応しない」

感応開発をうたう商法をめぐっては、消費者庁が8月29日、教材業者に初の業務停止命令を出したばかりだ(既報)。市消費生活センターへの関連相談は、今年に入って前年同期の3倍を超えている。

中級講座まで受けて退会したという30代の男性は、本紙の取材に応じた。「合宿の話は、中級の最後の回で急に出てきます。『ここから先は、書いたものでは渡せない』と言われて。渡せないものがある、という言い方が、いちばん効くんです」

男性は最終課程の申し込みをいったん決めたが、費用を工面できずにやめた。「やめた理由が金だったのが、いま考えると運がよかった。理屈で気づいてやめたわけじゃないので」。会では、視えたという体験談を会員が順に話す時間があり、話した内容を他の会員が否定しない決まりがあったという。「否定しないと決めると、話は必ず大きくなっていきます」

消費生活相談に詳しい弁護士は「宿泊型の課程は、契約書面の交付や解除の説明が不十分な例が多い。参加費が高額でも、契約の形が整っていなければ返金の余地はある」と指摘する。ただし今回のように事業者と連絡が取れない場合、返金請求の相手方をどう特定するかが壁になるという。

■連絡先は、電話番号だけ

団体の連絡先として公開されていたのは電話番号1件と問い合わせ用のフォームのみで、いずれも8月下旬から応答がない。登記上の事務所として届け出のあった都内の住所は、実際には郵便物の転送を扱う事業者の所在地だった。代表を名乗る人物の氏名も、複数の表記が確認されている。

家主(72)は「静かに使ってくれる人たちでした。近所づきあいはなかったが、苦情も一度もなかった」と話す。「雨戸を外していいかとは聞かれました。理由は聞きませんでした。夏だから、風を通すのだと思って」

警察は事件性の有無を含めて調べており、2人の目撃情報を呼びかけている。合宿に参加した他の会員についても、所在の確認を進めている。

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