瑠海国王カイエ3世、10月に国賓来訪へ 鑑定協力の拡大が焦点
日ノ國政府は30日、瑠海王国のカイエ3世国王(34)を10月に国賓として迎える方向で最終調整に入ったと発表した。実現すれば即位後初の来訪となる。漂着物鑑定の協力協定の拡大が主要議題で、両国は鑑定人材の相互研修などを検討している。
■10月中旬で調整
外務省によると、来訪は10月中旬から下旬にかけての3泊4日を軸に調整が進む。国賓としての受け入れは3年ぶりで、瑠海の元首を国賓格で迎えるのは初めてとなる。滞在中は宮中での歓迎行事と首相との会談のほか、城東の第三鑑定センターの視察が検討されている。外国元首がセンターの鑑定棟に入れば、開設以来初めてだ。
会談の主題は、5年前に結ばれた漂着物鑑定協力協定の拡大となる。拡大方針は今夏に固まり(既報)、実務者級の協議はすでに4回を数える。今回は協定文書の署名時期を含めた政治判断が焦点になる。
■待ち時間4カ月のセンターへ、研修生
協定拡大の実務の柱は、人だ。瑠海で漂着物の回収実務を担う拾い上げ庁と第三鑑定センターの間で、鑑定人・鑑定補助員の相互研修を制度として固める案が浮上している。期間は半年から1年、初年度は双方10人程度からの想定という。
センターの鑑定待ちは、この夏およそ4カ月に達した。湾岸部の透過指数の高止まり(既報)で持ち込みが増える一方、鑑定補助員の欠員は埋まっていない。養成には最短でも2年かかる。
センターの中堅鑑定人の一人は言う。「研修生を受け入れるというのは、こちらも人を出すということです。正直、いま抜ける余裕はない。それでも、海の上で拾ってきた経験のある人が数人でも棚の前に立てば、減り方は変わると思います」
日ノ國側には、瑠海の音響探査技術の沿岸導入を早めたいという計算もある。
■「拾い上げ庁」という役所
瑠海の拾い上げ庁は、回収船団の国営化に伴って透暦20年代に設けられた役所だ。海上での回収から一次鑑定、所有者不明物の保管までを一つの庁で抱える。日ノ國では回収がTDA、鑑定がセンター、保管が自治体と分かれており、研修の設計は、この違いをどう吸収するかから始まっている。
外務省の実務担当者は言う。「向こうの補助員は、船の上で三日待つのを仕事だと思っている。こちらの補助員は、棚の前で三日待つのを仕事だと思っている。同じ我慢でも、使う筋肉が違うんです」
日程の調整そのものは6月に始まった。当初は9月7日の漂着記念日に合わせる案もあったが、式典の警備と重なることから見送られた。10月案は瑠海側から示されたもので、同国の回収船団が冬の出漁準備に入る前の時期にあたる。
■難航は儀典より「配信」
一方、調整が難航しているのは、儀典よりむしろ「配信」の扱いだという。即位式を自ら配信した国王は、滞在中も自身の配信を続ける意向を伝えているとされる。日ノ國側は宮中行事の撮影範囲を絞りたい考えで、警備当局は移動経路のリアルタイム配信に難色を示している。
外務省幹部は漏らす。「『前例がない』の一点張りでは、あちらの若い王様に笑われますよ。前例は、こちらで作ればいい」
宮内当局は「行事の性質に応じて個別に判断する」としている。国王の配信の切り抜きは日ノ國でも370万回再生され、東亰の若年層に固定の視聴者を持つ。
■「一世たちにも刺さる」
漂着一世の多い深川では、来訪の報は井戸端の話題になった。飲食店を営む瀬能タカラさん(41)は「うちの常連にも瑠海びいきは多いですよ。漂着物を拾って国を立てたって話は、こっちの一世たちにも刺さるんです」と話す。
「国賓と言われても、正直、遠い話です。うちは仕込みがありますから、当日はテレビもつけません。ただね、あの国の王様が『拾う』という言葉を恥ずかしがらないのは、いいと思う。こっちじゃ、拾われた側は長いこと黙っていましたから」
深川の商店街では、瑠海の国旗を模した小旗を店先に出す店も現れた。旗を出した乾物屋の男性(72)は漂着二世だ。「父が拾われた側の人間でしたから。あの国の話を聞くと、拾う側にも段取りがあったんだな、と思うんです。段取りの話は、こっちには残っていませんでね」
■玄洲とは対照的に
観測データの共有をめぐる玄洲との協議は停滞したままだ(既報)。今年に入って実務者協議は2回開かれたが、共有範囲の合意には至っていない。
政府関係者は「一方が動かないから、もう一方を動かす、という単純な話ではない。ただ、動く相手と先に動くのは外交の常道です」と語る。
来訪日程の正式発表は9月中旬の見通し。宮中の歓迎行事の会場では、すでに敷物と旗竿の下見が始まっている。


