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未明の「ノック」通報17件 州崎の集合住宅、カメラに人影なし

2026年(透暦52年)9月1日 (社会部・真柴湊) English

州崎の集合住宅「州崎第三住宅」で8月中旬以降、未明に玄関扉を叩く音を聞いたという住民の届け出が17件に上っている。管理組合の集計では、音は午前3時前後に集中し、いずれも二回ずつ。廊下の防犯カメラには該当時間帯、人の姿が記録されていない。警察は夜間巡回を強化したが原因は特定されておらず、TDAは「周辺の透過指数は平常値で、観測記録に対応する事象はない」としている。

■低い階から、上へ

最初の届け出は8月14日だった。1階の住民が午前3時ごろ、玄関扉を二回叩く音で目を覚まし、翌朝、管理人室に伝えた。以後、届け出は5棟のうち特定の1棟に集中し、1日までに17件になった。

内容は互いによく似ている。音は二回。間隔は一呼吸ほど。強く叩く音ではなく、指の背で軽く当てるような音だという。届け出の時刻を並べると、音は低層階から順に上の階へ移り、最上階の5階で止まっている。同じ夜に2件、3件と続いた日もあった。

3階の住民の女性(58)は「覗き穴から見ても誰もいません。ただ、うちの戸が鳴る前に、隣の戸の音が先に聞こえるんです。順番が来るのが分かるのが、いちばん嫌です」と話す。

5階の男性(45)は8月下旬、音を聞いた直後に扉を開けた。「廊下は端まで見えました。誰もいません。下の階段のところで、明かりのセンサーが点いてるのだけ見えました。人が通ればセンサーは点く。だから誰かが下りていったんだと思いたいんですが、点いていたのは、上りの側でした」

■防犯カメラには何も

管理組合によると、当該棟の廊下には1階と3階、5階の3カ所に防犯カメラがある。届け出のあった夜の映像を確認したが、いずれの時間帯にも人の姿は記録されていなかった。組合は8月下旬、機器業者に点検を依頼したが、異常は見つかっていない。

管理組合は8月29日、全戸に文書を配った。文面は2行だけだ。「未明の戸叩きには応答しないでください。応答してしまった場合も、異状の有無にかかわらず管理組合に報告してください」。あとは問い合わせ先の電話番号が添えられているだけで、原因についても、想定される事態についても、一切書かれていない。

理事長(69)は「書けることしか書けません。理由を書くと、その理由を信じる人と信じない人に住民が割れます。うちは400世帯です。割れると、回覧板が止まるんです」と話した。

■1977年築、初期の入居記録

州崎第三住宅は1977年築の5棟構成で、市の住宅供給公社が管理してきた。市の住宅台帳には、入居開始当初は漂着民世帯の入居が多かった記録が残る。当時、湾岸の仮設住宅から順次移った世帯が全体の4割近くを占めた時期があったという。

30年以上住む男性(81)は「昔は、夜中に戸を叩いて人を起こす習慣が確かにありました。仮設のころ、避難の連絡は口伝えでしたから。二回叩いて、返事がなければ次の戸へ行く。あれは決まりでした」と話す。「でも、それをやってた連中は、もう誰もここにいませんよ」

管理組合は「入居の経緯と今回の件を結びつける根拠はない」としている。

管理人室には、届け出を受けた日時と部屋番号を書き留めた大学ノートがある。前任の管理人から引き継いだもので、設備の不具合や騒音の苦情が並ぶ中に、今回の17件も同じ書式で記録されている。現在の管理人(63)は「特別な欄は作っていません。作ると、特別なことになってしまうので」と話した。

他の4棟では届け出は出ていない。ただ、隣接する棟の住民の間でも話は広がっており、8月末に予定されていた棟間の夏祭りの片づけ作業は、参加者が例年より多かったという。「一人で夜中に起きているより、みんなで昼間に片づけていたほうがいい、というだけのことです」と自治会の女性(66)は言う。

■巡回と、寝る場所

警察は8月末から夜間巡回を強化し、午前2時から4時にかけて棟内を通るようにした。巡回中に音を確認した記録はない。「事件性は現時点で確認されていない」とし、当面は巡回を続けるという。

自治会は9月から、有志による見回りを始めた。とはいえ、廊下に人が立っていると、その夜は音がしないという住民の話もあり、当番の希望者は多くない。

3階の女性は8月末から、寝室を廊下側から奥の部屋に移した。「音が小さくなるわけじゃないんです。ただ、扉から遠いと、起きるまでに一拍あるので。その一拍で、二回目が終わってるんです」

TDAは「周辺の透過指数は平常値で、観測記録に対応する事象はない」とし、当該住宅を観測対象に加える予定はないとしている。

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