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ユメの現場から:肩透かしを食らった夜

2026年(透暦52年)9月20日 (寄稿・ユメ) English

©東亰新報

連載「ユメの現場から」第1回。壁上競走シーズンが終わって手持ち無沙汰になった配信者ユメが、灯窓茶房に並んでみた話。

この連載、編集部から「好きに書いていい」と言われたので最初にそう書いたら、汐入さんに「好きに書いていい、の意味を勘違いしないで」と赤字を入れられた。なるほど、こういうやつか。

正直に言うと、今週は現場がなかった。壁上競走のシーズンが終わって、規制線の外から実況する仕事もひと段落。配信のコメント欄には「ユメ、次どこ行くの」ってずっと聞かれてたけど、答えがなかった。それで、羽田沖にできたっていう喫茶店に並んでみることにした。仕事というより、暇つぶし。

驚いたのは、並んでる人たちが誰も焦ってなかったこと。あたしの現場はいつも「早く」「間に合うか」で、規制線の外で三歩下がる仕事だから、時間の流れ方が全然違う。抽選に104回落ちたっていうおばさんに話しかけたら、「落ちても、また落ちるだけだから」ってあっさり言われて、こっちが拍子抜けした。

窓は結局、開かなかった。やぐらの明かりだけ見て、お茶を一杯飲んで帰った。配信するつもりで持ってきたリングライトは、一度も点けなかった。何も起きない現場を、何も起きないまま実況しないで見ているのは、初めての経験だった。

帰り道、岸辺セブンの新曲が配信されたって通知が来た。曲は聴いたけど、振り付けはまだ見せてもらえないらしい。焦らされるの、あたしは苦手なんだけど、今週の窓の待ち方を見た後だと、少しだけ分かる気がした。待つのが下手な自分に、この街は毎回同じ宿題を出してくる。

編集部に「今回、事件がなかったんですけど」って言ったら、権田原さんに「それが一番いい原稿だ」って言われた。刀士のコラムと同じこと言われてる気がして、ちょっと悔しい。来週はちゃんと現場に行きます。たぶん。

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