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次元調査

羽田沖に「窓カフェ」開業 抽選漏れの見学者も、灯しの街を眺めて待つ

2026年(透暦52年)9月18日 (科学部・次元調査・戸田輪) English

©東亰新報

羽田沖の第1定常窓「灯しの街」観測やぐらに隣接する形で18日、民間の喫茶店「灯窓茶房(ともしまどさぼう)」が開業した。既報のとおり一般見学は抽選制で倍率20倍を超える月もあり、外れた人や順番待ちの家族連れが、窓の代わりにガラス越しの海と観測やぐらの明かりを眺めながら過ごせる場所として企画された。次元調査課が公開資料の使用を許可した初の民間店舗という。

■ 抽選に外れた人のための場所

羽田沖の第1定常窓「灯しの街」観測やぐらのふもとに18日、喫茶店「灯窓茶房」が開業した。既報のとおり、第1窓の一般見学は1日80人枠・月初め一括受付の抽選制で、多い月には倍率が20倍を超える。9月16日には応募104回目でようやく初当選した只野恵美子さん(58、既報)のような例がある一方、大多数は外れたまま帰ることになる。灯窓茶房は、その「外れた人たち」のための場所として企画された。

店を切り盛りするのは、羽田で三代続く喫茶店の四代目・宮井 朔(みやい・さく、38)。「うちはもともと漁師や観測やぐらの職員が朝に寄る店だった。抽選に外れて肩を落として帰る家族連れを何年も見てきて、せめて海と、やぐらの明かりくらいは見ながら待てる場所を作りたいと思った」と話す。

■ 次元調査課が資料使用を許可

灯窓茶房の内装には、次元調査課が公開している観測資料の一部——石造りの都市と灯りの様子を描いた図版——が壁に飾られている。次元調査課によると、公開済みの観測資料を民間店舗が営業目的で使用することを許可したのは今回が初めてで、「窓の向こうの実像そのものではなく、公開範囲内の図版に限る」との条件が付いている。担当者は「窓グッズの需要が既にある以上、無許可の粗悪な模倣が広がるより、線引きを示したうえで健全な形にする方がいいと判断した」と説明した。

店内では、窓の実物ではなく、観測やぐらの明かりと夜の海をガラス越しに眺められる配置になっている。灯しの街の窓そのものは店から見えないが、宮井さんは「うちから見えるのは、やぐらの明かりだけ。それで十分だと思っている。向こうを覗き見る店にはしたくなかった」と話した。

■ 「今日は開いてます」の札

開業初日の18日、次元調査課の朝の発表では第1窓は「開見込み・夜」とされていた。店の入り口には、その日の開閉予報にあわせて「今日は開いてます」「今日は閉まってます」の札を出す仕組みが試験的に導入されている。宮井さんは「予報どおりに開くとは限らないのは分かっているが、期待を持って店に来てもらうきっかけにはなる」と話す。

初日の客の一人、抽選に3回連続で外れたという母親(34)は、小学生の息子とテーブルを囲んでいた。「見学できなくても、ここでやぐらの明かりを見ながら『今日は開いてるかな』と話すだけで、子どもは満足そうにしている」。隣で息子は「灯りが見えたら、向こうの人にも見えてるのかなって思う」と話し、母親が「それはまだ誰にも分からないのよ」と笑って答えた。次元調査課が繰り返し強調してきた「向こうがこちらを認識している証拠は、ない」という立場どおりの会話が、開業初日の店先で自然に交わされていた。

■ 倫理論争にも触れる棚

店の一角には、年内に初会合が予定される外部有識者検討会の資料や、既報の第2窓・第4窓・第5窓の長時間開口をめぐる報道の切り抜きが自由に読める棚も設けられている。宮井さんは「うちは覗き見の店じゃない、と言いながら、見ていていいのかという議論から目をそらす店にもしたくなかった」と話す。次元調査課の担当者は「民間の場でこうした議論に触れてもらえるのは、むしろ望ましい」とコメントした。

■ 窓漂着物のレプリカ、本物は置かない

店内では「灯しの街」を模したポストカードや、既報の窓漂着物(灯しの街の札など)を模したレプリカ雑貨も販売されている。本物の窓漂着物は次元境界管理法により国庫帰属となり、第三鑑定センター窓班の鑑定を経るため店に置くことはできない。宮井さんは「本物はうちにはないし、あってもいけない。レプリカだと分かるように、あえて少し雑に作ってもらった」と笑った。

■ 只野恵美子さんも初日に来店

既報のとおり9月16日夜、応募104回目でようやく第1窓の一般見学に初当選した只野恵美子さん(58)も、開業初日の18日、灯窓茶房に立ち寄った一人だった。「当選した日は嬉しくて眠れなかったけれど、見学できるのはまだ先の話。それまでの間、ここに来て待とうと思った」と話す只野さんに、宮井さんは開業記念のコーヒーを一杯サービスした。只野さんは「100回以上外れ続けた身としては、外れた人のための店ができたことが、当選した今になってもうれしい」と笑い、次に来る客のためにと、抽選の心構えを綴ったノートを店に置いていくことを申し出たという。

■ TDAの立場、「窓室の代わりにはならない」

次元調査課は灯窓茶房の開業について「民間の取り組みとして歓迎する」との立場を示す一方、「あくまで観測やぐらの外側の話であり、窓室そのものの機能や役割を代替するものではない」ともくぎを刺した。担当者は「見学の抽選倍率を下げる効果は期待できないが、外れた方の待ち時間の過ごし方が一つ増えるのは、次元調査課としても悪い話ではない」と述べた。既報のとおり第1窓の一般見学は1日80人枠が変わらない以上、抽選そのものの倍率緩和にはつながらない。

■ 宮井さんの次の構想

宮井さんは開業初日の取材の最後に、次の構想も明かした。「窓番の日誌の一節を、許可が得られた範囲で店内に貼り出せないか、次元調査課に相談している。向こうの世界の『答え』ではなく、こちらで働く人たちの言葉を紹介する場所にしたい」という。既報のとおり窓番個人の氏名は明らかにされていないが、日誌の言葉そのものは複数回、記事として引用されてきた経緯があり、宮井さんはそうした「観測する側の生活の手触り」を店の柱の一つに育てたい考えという。

■ 「見えない場所」であることの落ち着き

戸田輪記者は取材の最後、店の窓際でやぐらの明かりだけを見つめる客の多さに触れ、「窓室そのものより落ち着いて座っていられる場所、というのが灯窓茶房の一番の発明だと思う」と記した。抽選に外れることは、この街では珍しくない。それでも、外れた人が海を眺めながら次の抽選を待てる場所ができたことは、次元調査面にとっても小さな、しかし確かな明るいニュースだった。

■ 開業初日の客足

宮井さんによると、開業初日18日の来客数は夕方までに約90人にのぼり、想定の3倍近い入りだったという。「宣伝らしい宣伝はほとんどしていない。抽選に外れた人同士の口コミで広がったのだと思う」と驚きを隠さなかった。店の席数は18席と少なく、夕方以降は待ち時間が出る見込みで、宮井さんは「並んでもらうことになるかもしれないが、それはそれで、この街らしい待ち方だと思っている」と話した。

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