窓辺の灯り、今年は二度目 湾岸「秋の窓の日」あす初の統一点灯
湾岸発の新しい風習「秋の窓の日」(9月2日)を前に、発祥の地とされる潮見橋通り商店街では1日、各店が窓辺に灯りを並べる準備に追われた。7月2日の「窓の日」に対し、秋の実施が広く呼びかけられるのは今年が初めて。商店街は2日午後7時の「統一点灯」を予定している。
■由来は、決めない
1日の夕方、潮見橋通りには脚立が何本も出ていた。窓の内側の埃を拭き、蝋燭立てを並べ、電池を入れ替える。灯りを置くだけの行事に、前日の半日がかかる。
由来は例によって諸説ある。「夏の窓の日に灯りを出しそびれた店の敗者復活戦」と笑うのは商店街の理事長(58)。一方で「漂着記念日の週に、岸へ向けて灯りを出すのが筋」という古参の声もあり、商店街はどちらとも決めていない。
「由来を決めると、由来と違うやり方が間違いになっちゃうから」と理事長は言う。呼びかけの文面も、そこだけは何度も書き直したという。最終的に商店街が全戸に配った紙には「9月2日の夜、窓に灯りを置きます」とだけ書かれ、理由は一行も書かれていない。
7月2日の「窓の日」は、この数年で湾岸一帯に広がった。秋の実施は昨年まで、一部の店が勝手にやっているだけだった。今年、商店街が正式に呼びかけたことで、隣接する二つの商店会も同調する。
■七月の窓と、九月の窓
そもそも「窓の日」という呼び名がいつ生まれたのかも、はっきりしない。湾岸では以前から、夏の夜に窓辺へ小さな灯りを置く家があった。それが年に一度の日付を持つようになったのは、この10年ほどのことだ。7月2日という日付の由来についても、商店街は説明を避ける。
呼び名の広がりには、増刷を重ねる『一九七五年の窓』(既報)の影響を指摘する声もある。理事長は「本を読んで灯りを置き始めた人はいるでしょう。でも、本より先に置いていた人もいる。どっちが先かは、うちの通りでは誰も勝てない議論です」と笑った。
秋の実施は、記録に残る限りでは3年前、この通りの数軒が勝手に始めたのが最初とされる。翌年に十数軒、今年は通りのほぼ全店が参加する。商店街が数えたところ、1日夕方時点で灯りの準備を確認できた店は52軒中48軒だった。
■勝手に始めた者勝ち
金物店の主人(71)は去年、呼びかけが始まる前から勝手に灯りを出していた側だ。この日も、頼まれてもいないのに店先の街灯の位置まで測っていた。
「風習ってのは、勝手に始めた者勝ちです。役所が要綱を作ったら終わりですよ」
その言い分に、理事長も反論しない。市の文化振興課は「地域の自発的な取り組みとして注視している」という立場で、後援も補助も出していない。担当者は「出してほしいという要望も、まだ来ていません」と話した。
灯りは電池式でも蝋燭でも構わない。ただ商店街は、派手な電飾は勧めていない。「消えない灯りより、消えるかもしれない灯りのほうが、人は立ち止まる」というのが理事長の説明だ。喫茶店の女性店主(44)は蝋燭を三本用意した。「風で消えたら点け直します。それも含めて、うちの窓です」
■岸のほうへ
商店街の外れ、呼びかけの範囲ではない住宅にも、窓辺に灯りを置く家が出ている。理由を尋ねると、答えは一つにならない。仏壇の灯明を窓に移すという年配の女性(77)もいれば、「なんとなく」という若い夫婦もいる。
湾岸で生まれた二世の男性(52)は、父親が一世だった。「うちの親父は、七月も九月も関係なく、一年中、窓辺に小さいのを点けてました。子どものころは電気代のことしか思わなかった。いまは、あれが何だったのか、聞かないままになりました」
近所の小学生の女の子は、この日の夕方、青果店の窓に並んだ電池式のランタンを一つずつ数えていた。「去年より二つ多い」。数えているのかと聞くと、去年も数えたのだと言う。「来年も数えます。減ったら、お店に言います」
■モノレールは臨時増発を検討
2日は湾岸一帯で日没後の人出が見込まれる。湾岸モノレールは臨時増発を検討している。透過指数の高止まりで続いていた徐行規制の影響もあり、同社は「増発の可否は当日午後に判断する」としている。
商店街は当日、通りの車両通行を午後6時から2時間、部分的に制限する。点灯は午後7時の予定だが、合図はない。理事長は「時計を合わせる気はありません」と言った。「だいたい7時に、それぞれの窓で、それぞれが点ければいい。そろってしまったら、行事になってしまう」


