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一世招待、今年は121人 漂着記念日、送迎に市民ボランティア

2026年(透暦52年)9月1日 (社会部・汐入梨花) English

9月7日の漂着記念日を前に、東亰市は1日、湾岸の岸浜公園で開く記念式典の概要を発表した。招待する漂着一世は121人で、10年前のほぼ半数。高齢化が進む一世の参列を支えるため、今年から市民ボランティアによる自宅送迎が導入される。

■百二十一の椅子

式典は7日正午開始。冒頭で「岸の子守唄」が中学生合唱団28人により初めて公の場で歌われる(既報)。招待者の最高齢は101歳、平均年齢は70代後半になる。招待名簿の121人は、10年前のほぼ半数だ。

市によると、招待者向けの席は最前列から4列目までに固めた。ステージまでの距離を縮めるため、今年は舞台を例年より6メートル前に出す。車いすの動線を確保する分、一般席は例年より80席少ない。会場に出向くことが難しい招待者向けには、市内3カ所の福祉施設で式典の中継を流す。中継先での「岸の子守唄」の音量は、施設側と事前に打ち合わせて決めたという。

準備は1日、公園の芝生広場で本格化した。市の職員が座席図を挟んだクリップボードを手に、白い折りたたみ椅子の列を測りながら並べていた。「一列ずつ間隔を広くしたので、去年の図面はもう使えないんです」と担当者。

■名簿は、どうつくられるか

招待名簿は、市が保管する漂着一世の登録記録をもとに作られる。透暦元年の集団漂着の際に収容所で作成された名簿が原簿で、以後、転出や死亡の届け出のたびに書き換えられてきた。市は毎年6月に該当者へ案内を送り、参列の意向を返信で確かめる。返信のない人には電話をかけ、それでも確認できない場合は民生委員に連絡を頼む。

「招待した人数」と「返信のあった人数」は、毎年少しずつ離れていく。今年、案内を送った先は148件。うち121人が参列の意向を示した。差の27件のうち、体調を理由とする辞退は19件、残る8件は連絡がつかないままだ。

10年前の招待者は237人だった。5年前は174人。減り方は一定ではなく、ここ2年はやや緩やかになっている。市の担当者は「緩やかになった理由は、分かりません。数えているだけです」と述べた。

■定員80人に、240人

送迎ボランティアは今年が初めての試みだ。定員80人に対し、応募は240人を超えた。市は運転歴と車両の条件で書類選考し、8月下旬に半日の研修を行った。研修では、乗降の介助のほか、当日に体調が優れない場合の中止判断の手順を確認した。「行きたいという気持ちを、行けるかどうかの判断より優先させない」というのが、研修で最も強く言われたことだったという。

採用された大学生の男性(20)は「授業で習った年表の中の人が、近所のおじいちゃんとして助手席に乗ってくる。変な言い方ですけど、教科書がしゃべるんです」と話す。担当する招待者の自宅へ、8月中に一度あいさつに行った。「玄関で20分立ち話をして、結局、当日の集合時間の話は5分でした」

送迎を受ける一世の女性(88)は、式典に出るのは3年ぶりだという。「バスの乗り換えが一つ増えてから、行かなくなりました。距離ではなく、乗り換えの数なんです、年をとると」

合唱団の生徒たちは、当日の朝に会場でリハーサルをする。中学3年の女子生徒(15)は「客席の最前列に、歌を教わった人たちが座るんだと思うと、練習のときと同じ顔ではいられません」と話した。市は合唱の間、会場のスピーカーの音量を通常より一段落とす。「前のほうの席の方が、生の声を聞けるように」というのが理由だという。

■名簿が短くなる速さ

式典を所管する市こども・若者局は「式典は年に一度ですが、招待名簿は毎年短くなります。名簿が短くなる速さに、行事の側が追いつかないといけない」としている。市は来年度以降、送迎の枠を広げるかどうかを、当日の実施状況を見て検討する。

一世の高齢化は、行事の形そのものを変えつつある。かつて式典の中心だった一世代表のあいさつは、5年前から二世・三世との連名になった。今年は、あいさつに立つ一世が椅子から立ち上がらずに話せるよう、演台の高さを下げた特注のものを用意する。

漂着記念日をめぐっては、超党派の議員連盟が祝日化をめざしている(既報)。市の担当者は「祝日になれば来やすくなる方はいます。ただ、来られる方の数は、それとは別の速さで減ります」と述べた。

式典の運営を担う職員も、顔ぶれが変わった。10年前まで会場責任者を務めた元職員(72)は、退職後もボランティアとして毎年会場に立つ。「昔は、招待者に椅子が足りなくて立ち見が出た。いまは椅子が余ります。余った椅子をどこに片づけるかを、当日に決めるのがつらいんです」

一世の二世にあたる女性(58)は、父を送迎ボランティアに預けることに最初は抵抗があったという。「他人様の車に父を乗せるのが、なんとなく。でも下見に来た学生さんが、父の靴の高さを測っていったんです。乗り降りのしやすい座席の高さを見ていたと。それで、任せようと思いました」

■当日の朝、二時間半

送迎ボランティアの当日の動きは、一台につき自宅出発から会場到着まで平均40分と見込む。市は集合時間を招待者ごとに10分ずつずらし、公園西側の車寄せでの滞留を防ぐ。車寄せに停められるのは同時に4台まで。降車の介助には市の職員が付く。

研修で最も時間を割いたのは、雨具の扱いだったという。傘をさしかける位置、車いすに乗ったままの合羽の着せ方。「介助の技術というより、手順の共有です。当日は初対面同士がその場で動きますから」と市の担当者は説明した。

式典の終了は午後1時20分の予定。帰りの送迎は、会場での歓談時間を確保するため、一律の出発時刻を決めていない。「帰りの車の時間だけは、あの方たちに決めてもらいます」

■手荷物検査と、雨天の判断

当日は会場周辺で手荷物検査が行われる。開場は午前10時半で、市は招待者と一般来場者の入場口を分ける。7日はTDAの集中観測の最終日にあたり(既報)、公園東側の護岸に観測機材が置かれるが、来場動線とは重ならないという。

雨天決行だが、荒天時は招待者のみ屋内会場に移し、一般来場は中継に切り替える。判断は当日午前8時。市の担当者は「一世の方に、待たせる時間をつくらないことだけを考えています」と話した。

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