仔に名前を 公募始まる、「向こうの仔」にふさわしい呼び名は
重傷者を出したニュースの同じ日に、もう一つの話題が始まった。TDAは5日夕、第4窓「巨獣の原野」から越えてきた仔(既報)の呼び名を市民から公募すると発表した。固い発表文の最後に添えられた一文は、「正体不明の、でも確かに生きているものに、まず名前をつけたい」。
■ 「仮称のままにはしない」
TDA広報は公募の狙いについて「保護観察の対象として、これから長く付き合っていく可能性がある。『仔』『第4窓の個体』という仮称のままでは、関わる職員も、報じる側も、見る側も、距離が縮まらない」と説明した。応募は専用はがきとウェブで受け付け、締め切りは11月30日。選考は次元調査課と生物管理課の担当者に加え、公募で選ばれた市民代表数名が加わる予定で、年内の発表を目指すという。
■ 配信者ユメ、さっそく反応
既報の配信者ユメ(19、漂着ハーフ)は、発表直後に自身の配信で「もう10個くらい考えた。全部可愛い名前にしたい」と声を弾ませた。ユメは王子の丘には近づけないため、配信は編集部からの中継にとどめたが、「怖いニュースと同じ日だから、せめて名前だけは明るくしてあげたい」と語った。既報どおり、ユメの配信は編集部に見守られながら書く体で知られるが、この日は編集部からも「ふざけすぎた名前は投票にかけられない」という注意が一度入ったという。
■ 窓グッズ商戦にも波紋
羽田沖の「灯窓茶房」(既報・店主・宮井朔)をはじめ、窓グッズを扱う店舗からは早くも「仔のモチーフを扱いたいが、公募の結果が出るまでは様子を見る」との声が聞かれた。次元調査課は「名前が決まる前の商業利用については、既報の民間利用許諾ガイドラインの検討と合わせて整理する」としている。一方、潮見橋商店街では、理事長の田村忠雄氏(既報)が「名前が決まったら、商店街で祝う会をやりたい」と早くも意欲を見せた。
■ 寄せられた声
公募開始からわずか数時間で、TDAの窓口には電話とメールが相次いだ。「すでに『ぬく』という案を送った」という市内の主婦の声や、「漢字一文字がいい、画数の少ない字で」という年配男性の提案など、反応は様々だった。広報担当者は「予想以上の反応に驚いている。重傷を負った窓番の方の一日も早い回復を願う声と並んで届いているのが、この街らしいと思った」と話した。
TDAは、公募と並行して、保護観察下の仔の健康状態についても随時発表していく方針を示している。
■ 公募要領
募集は「ひらがな、またはひらがなに読みを振った漢字一文字から三文字まで」とされ、既に向こうの世界で呼ばれているかもしれない呼び名を推測で当てはめることは避けるよう注意書きが添えられた。TDA広報は「向こう側での呼び名は分からないし、分かったとしても発音できるとは限らない。あくまで、こちら側の呼び名としての公募だと理解してほしい」と説明した。1人につき応募は3件まで。当選者には記念品として、第4窓の観測記録をあしらった非売品の記念はがきが贈られる予定という。
■ 編集部にも相談の声
本紙の編集部にも、読者から「どんな名前が良いと思うか」という問い合わせが数件あったという。担当デスクは「記者の立場で推薦することはできないが、個人としては、呼びやすく、短い名前がいいと思う」と笑いながら話した。連載4コマ「ゆらり」にも、この日の紙面の話題として取り上げられている(既報・本紙)。
■ 重さと軽さの両方を
次元調査担当の戸田輪記者は、今回の公募について「同じ日の紙面に重傷のニュースがあるからこそ、この公募を軽い話として片付けたくないし、逆に重くしすぎたくもない。名前をつけるという行為には、その両方を同時に抱える力があると思う」とコメントしている。




