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政治

保護か、排除か 枝川の教訓、対応の分かれ目に

2026年(透暦52年)11月5日 (社会部・真柴湊) English

©東亰新報

生きた大型生物が初めて定常窓を越えてきたという事実は、政治の場に新しい論点を持ち込んだ。TDAが第4窓「巨獣の原野」の仔(既報)を排除措置ではなく保護観察の対象とした判断を受け、5日の国会・都議会ではさっそく与野党双方から質疑が飛んだ。既報(9月2日)の枝川の特定漂着種への対応との違いが、繰り返し引き合いに出された。

■ 「なぜ枝川とは違う対応か」

衆院の委員会質疑で、主権派・宗像鉄男議員(58、既報)は「枝川では正体不明の生物に600メートルの封鎖線を敷き、2人の負傷者を出してなお排除措置を継続した。今回は正体がある程度分かっている大型生物でありながら、保護観察で済ませる。基準は何か」と迫った。答弁に立ったTDA局長・火浦誠は、「枝川の対象は正体不明の特定漂着種で、継続的に人への危害が確認されていた。今回の仔は、既報(10月28日)の時点から観測を続けており、暴れる様子もなく、攻撃性を示したという報告もない。対象の違いが、対応の違いにつながっている」と説明した。

宗像氏はさらに「成長すれば数十メートルの個体になる可能性がある生物を、住宅地に近い施設に置き続けるのか」と追及。火浦局長は「収容場所と期間は検討中であり、住宅地への影響を踏まえて見直す可能性もある」と述べ、明確な期限は示さなかった。

■ 都議会でも

都議会では、城北区選出の議員から王子の丘の避難対応(既報)についての質問が相次いだ。区の防災担当者は「避難範囲の設定は予防的なものであり、今後同様の事案が起きた場合の対応指針を区独自にも検討したい」と答えた。既報の梶浦悦子座長(湾洋大学教授)が率いる外部有識者検討会は、11月上旬に予定する会合で、仔への対応を優先議題として取り上げる方針を次元調査課が明らかにしている。

■ 枝川の教訓

枝川の事案は、正体不明の特定漂着種により作業員2人が負傷し、封鎖は最終的に600メートルまで拡大、対象は捕獲されず経過した(既報)。生物管理課の内部には、この事案を踏まえ「正体が分からないまま封鎖を広げ続けることへの反省」があったとされ、今回の判断にも影響したとみられる。生物管理課の担当者は「枝川では、何が起きているか分からないまま対応が後手に回った部分があった。今回は仔の個体が明確に見えており、同じ戸惑いを繰り返さないという意識はあった」と話した。

一方、枝川で負傷した作業員の労災手続きに当時関わった弁護士は取材に「正体が分かっているかどうかで扱いが変わるのは理解できるが、住民からすれば『結局、行政の裁量で決まる』という不信感が残る構図は同じだ」と指摘した。

■ 制度の空白

今回の事態が突いたのは、「定常窓を越えて生物が生きてこちら側に現れた場合」の対応を定めた制度が、これまで存在しなかったという空白だった。次元境界管理法(1983年)は漂着物の国庫帰属などを定めるが、生きた大型生物の越境を想定した条文はない。TDA法務担当者は「現行法の枠内で、生物管理課の裁量による保護観察として対応している。恒久的な制度化が必要かどうかは、今回の事案を踏まえて検討课題になる」と述べた。

与党内からも「法整備を急ぐべきだ」との声が出ており、観測データ公開法案(既報)の審議と並行して、新たな論点として扱われる可能性がある。帯刀郁子氏(既報、ロボット法制審委員)は、この件とは別件としながらも「制度が後から現実に追いつく形は、共生ロボットの議論でも繰り返されてきた。今回も拙速な結論を避けてほしい」とコメントした。

■ 野党の一部からは慎重論も

一方で、野党内にも「排除を急げ」との声一本ではない。既報の観測データ公開法案を推進する議員の一人は「生きて越えてきたものを、よく分からないからといって排除に傾けるのは、この国がこれまで積み上げてきた『分からないことは分からないと言う』という流儀に反する」と述べ、保護観察の方針を支持した。この議員は「枝川と違うのは、むしろ今回は相手の姿がはっきり見えていることだ。見えているのに排除するのと、見えているから慎重になるのとでは、まったく別の判断になる」と加えた。

与野党の立場は、必ずしも「与党=保護」「野党=排除」という単純な図式に収まっておらず、委員会室では珍しく党派を越えた質疑の応酬が続いた。ある与党議員は「支持者からは『かわいそう』という声と『怖い』という声が半々で届いている。どちらの声も無視できない」と本音を漏らした。

■ 枝川の住民の視点

枝川の事案で封鎖の影響を受けた住民の一人(既報時点で取材に応じた工場夜勤の男性、48)は、今回の報道を見て「あのときは、何だったのかさえ最後まで分からなかった。今回は少なくとも、大きさも姿も分かっている。その違いは大きいと思う」と話した。枝川の封鎖は既報のとおり解除時期が明示されず、対象も最終的に特定されなかった経緯があり、今回の迅速な情報公開とは対照的だったとの指摘も出ている。

■ 今後

保護観察の具体的な期間・基準、住宅地周辺の安全対策、そして恒久的な制度の是非——いずれも結論は出ていない。次元調査課は「仔の状態を見ながら、専門家の助言を踏まえて判断する」と繰り返すにとどめており、政治の場での議論は今後も続く見通しだ。

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