灯窓茶房に長い列——「見ていた景色が、向こうの地図になっていた」
羽田沖の「灯窓茶房」に、3日は開店前から列ができた。既報の第5窓の地図公開を受け、店の客たちが窓越しに眺めてきた夜景が、向こうの紙に描かれていたかもしれないと知ったからだ。店主の宮井朔さん(38)は急いで新しいポストカードの図案を描き始めた。
■ 開店前から列
羽田沖の第1定常窓「灯しの街」観測やぐらのふもとにある喫茶店「灯窓茶房」は、3日午前、開店の30分前から列ができる珍しい朝を迎えた。既報(10月20日・24日・31日)を追ってきた常連客たちが、同日発表された第5窓「剣の国」の地図公開(本紙既報)を受けて集まったためだ。店主の宮井朔さん(38)は「開けた瞬間、いつもの倍くらいの人が並んでいて、何事かと思った」と振り返った。
■ 「自分たちが見ていた景色が、向こうの紙になっていた」
灯窓茶房は、第1窓の見学抽選に外れた人たちが、観測やぐらの明かりと海を眺めて過ごす場所として既報(9月18日)に開業した。窓の実物は店からは見えないが、既報(10月8日)の「光の行列」や、既報(10月13日)のポストカードを通じて、常連客の多くは第1窓の夜景に親しんでいる。常連の男性(68、既報の手ぬぐい購入者)は「実物を見たことはないが、手ぬぐいの柄なら毎日見ている。その柄が、よその窓の紙に描かれていたと聞いて、背筋が伸びた」と話した。別の客の女性(34、会社員)は「見学に当たったことはないけれど、ここに通ってもう何カ月にもなる。自分が眺めてきた海の向こうの景色が、別の窓からも見えていたなんて、ちょっと鳥肌が立った」と語った。
■ 店主、急いで新図案を描く
宮井さんは「ポストカードと手ぬぐいは既報の図案のままで良いと思っていたが、今日だけは別だ」と話し、開店中にもかかわらずノートを広げ、地図と夜景を並べた新しい図案のスケッチを始めた。「本物の地図や漂着物はもちろん店に置けないし、描くのも想像の範囲でしかない。でも、今日見てきた景色を自分の手で一度描いてみたかった」と宮井さんは言う。発売は未定で、「次元調査課の許諾ガイドラインができたら、真っ先に従う」という既報どおりの姿勢も改めて示した。
■ 倍率への影響も
次元調査課によると、第1窓の一般見学抽選は既報(11月1日)のとおり倍率が常時20倍を超えており、3日朝の発表を受けて問い合わせ窓口にも通常の数倍の電話が入ったという。担当者は「地図が公開されたからといって、抽選の枠や方式が変わるわけではない」と説明する一方、「窓を見る目が、今日から少し変わる人もいるかもしれない」とも述べた。
■ 「実感」が店の役目
灯窓茶房は次元調査課が観測資料の商業使用を許可した初の民間店舗で、窓の実物こそ見えないが、観測やぐらの明かりと海を通じて「本当にある」という手触りを提供してきた場所だ。宮井さんは「うちの仕事は、答えを出すことじゃなくて、分からないことを眺めながら一杯のお茶を飲んでもらうことだと思っている。今日はその『分からないこと』がちょっと広がった日だった」と話し、慌ただしい開店初日を終えた。





