同じ世界だった——第5窓の紙は地図、灯しの街の夜景と重なる
筒の中の紙は、地図だった。TDA次元調査課と解読班は3日、第5窓「剣の国」から史上初めて回収された送付物(既報20日)に描かれた絵の全体を公開し、海岸線と建物の輪郭が第1窓「灯しの街」の夜景と重なることを確認したと発表した。第5窓と第1窓は、同じ世界線を見ている可能性が極めて高いという。
■ 筒の中の紙は、地図だった
TDA次元調査課と、亀戸・第三鑑定センターを拠点とする解読班は3日の定例会で、既報(10月20日)の第5窓「剣の国」から史上初めて回収された送付物——折りたたまれた一枚の紙——に描かれた絵の全体を、初めて公開した。これまで断片的にしか明かされていなかった線画は、湾の曲線と、その岸辺に沿って並ぶ細長い輪郭の列を描いた地図であることが分かった。次元調査課は「紙全体の構図を明らかにできる段階に入ったと判断した」と公開の理由を説明した。
■ 海岸線と建物の並びが、羽田沖の夜景と重なった
解読班が今回あわせて示したのは、この地図の海岸線の曲がり方と、岸辺に並ぶ輪郭の配置が、第1窓「灯しの街」(第7系統)で観測されている夜景——既報(10月8日)の光の行列が流れた、石造りの高層都市の坂道と、その稜線に並ぶ建物の輪郭——と重なるという分析結果だった。ヒンド連邦数理解析班のアニルダ・ラーオ主任は、両者の輪郭線を重ね合わせた資料を示し、「一致の度合いは、偶然の類似として説明できる範囲を超えている」と述べた。次元調査課は会見で「第5窓と第1窓は、同じ世界線を見ている可能性が極めて高いと判断する」と、初めて公式に踏み込んだ評価を示した。
■ 「似ている」が「同じ」に変わった4日間
既報(9月26日)のとおり、第5窓の市場で掲げられる「札」の書体が、第1窓の「式」の札と酷似しているという指摘は以前からあった。だが当時は「比較できる段階にない」として関連づけを避け続けてきた。20日の筒の回収、24日の解読班発足、31日の「対の記号」の確認——積み重ねた一枚ずつの手がかりが、3日の地図公開でようやく像を結んだことになる。次元調査課の担当者は「似ているという印象の話から、同じものを見ているという判断に変わるまでに、1カ月以上かかった。急がなかったことに意味があったと思う」と話した。
■ ザフィラス氏「海岸と塔、という私の印象は当たっていた」
紙の線画について24日の会見で「海岸線らしきものと、そこに立つ背の高い岩か塔のような輪郭」と述べていたヘラスの歴史学者ニコス・ザフィラス氏は、3日の発表を受けて「自分の見立てが『印象』の域を出なかったことに、今日初めて裏付けが付いた」と語った。一方で「海岸と塔が描かれていることと、それが第1窓の景色そのものであることは、別の階段だと自分では思っていた。数理解析班の重ね合わせの資料を見せられて、驚いた」とも述べ、学者としての慎重さを崩さなかった。
■ 系統番号をどうするか、新しい議題に
第1窓は第7系統、第5窓は第52系統として、これまで別々の番号で管理されてきた。同じ世界線である可能性が極めて高いという今回の判断は、次元境界管理法(1983年)に基づく系統の登録制度にとっても初めての事態となる。次元調査課は「二つの系統番号を一つに統合するかどうかは、検討会の議題にする。拙速な統合は避けたい」と述べ、11月上旬の外部有識者検討会(座長・梶浦悦子)で扱う方針を明らかにした。梶浦座長はコメントで「五つの定常窓のうち二つが同じ世界だったというのは、制度としても想定していなかった事態だ。腰を据えて議論したい」と述べた。
■ 記号の意味は、依然分からないまま
地図の全体像が分かった一方、既報(31日)の「対の記号」をはじめ、紙に記された記号そのものの意味は今回も解読されていない。解読班を率いるラーオ主任は「絵が何を描いているかが分かったことと、文字が何を意味するかが分かることは、まったく別の作業だ」と改めて強調した。音楽教師で漂着一世の岸浦汐(74、既報)は、地図を見せられた際の心境を「自分が流れ着いた先と、向こうの景色が同じ場所を指しているかもしれないと言われて、正直、足がすくんだ」と振り返った。既報の「岸の子守唄」との類似については「今日のことで何か証拠が増えたわけではない。でも、見ている方向は合っていたのかもしれないと思うと、怖いような、嬉しいような」と複雑な表情を見せた。
■ 分かっていること・分かっていないこと
分かっていること: 第5窓送付物の線画は湾を描いた地図であること。その海岸線・建物の輪郭が第1窓の夜景と一致すること。第5窓と第1窓は同じ世界線を見ている可能性が極めて高いこと。
分かっていないこと: 紙に記された記号(文字)が何を意味するか。地図が何のために送られたか。二つの系統(第7・第52)を一つとして扱うかどうかの制度上の結論。向こうがこちらを認識しているかどうか。
■ 記者の視点
この面を書きながら、「似ている」という言葉を何度も使ってきた。似ている札、似ている節回し、似ている輪郭——そのたびに「断定はしない」と付け加えるのが、この面の作法だった。今日、初めてその先に進んだ。もちろん、同じ世界だと分かったところで、向こうが何者かは少しも分からない。だが、五つの窓のうち二つが同じ場所を見ていたと知った日の会見室は、いつもより少し静かで、いつもより少し騒がしかった。世界はやはり広い——そして、思っていたより少しだけ、繋がっていた。









