予備調査協会、発足 「開けない・急かさない・記録を残す」自主三原則
無資格の漂着物「予備調査」業者による業界団体「予備調査協会」が30日、設立総会を開いて正式に発足した。参加47業者。「開けない・急かさない・記録を残す」の自主三原則を採択したが、来賓に招かれた第三鑑定センターは欠席し、公的側との溝は残ったままだ。
■47業者、うち31が個人
総会は亀戸の貸会議室で開かれた。参加47業者のうち31は従業員のいない個人事業主で、機材はほとんどが自前だ。会長には元センター鑑定補助員の露木要さん(56)が就いた。露木さんはセンターを退職して6年、この間は葛西で1人で調査を請け負ってきた。
予備調査業は、鑑定待ちの長期化とともに増えた。持ち主が漂着物を届け出てから鑑定の順番が回るまで、いまはおよそ4カ月かかる。その間、自宅の押し入れに置かれた物が何なのか、外側からだけでも知りたい——という需要に、資格制度のない民間業者が応えてきた。
■三原則、条文は6行
採択された自主三原則は、条文にすればわずか6行だ。漂着物を開封しない。依頼者に届け出義務を必ず説明し、届け出を急かさず、また遅らせもしない。調査記録を5年間保存し、センターの求めに応じて提供する。
「急かさない」と「遅らせもしない」が並ぶのには理由がある。届け出前に持ち込ませて相場を探る業者と、逆に「もう少し調べてから」と届け出を先延ばしさせる業者と、苦情はその両側から出ていた。
露木さんは総会でこう述べた。「われわれは鑑定の代わりではなく、鑑定までの待合室でありたい。待合室が診察室のふりをすれば、患者は死にます」
■資格のない仕事
予備調査業に資格制度はない。鑑定人の国家資格は透暦30年代に整えられたが、「鑑定に至る前の作業」は制度の外に置かれたままだ。届け出義務を負うのは持ち主であって業者ではなく、業者は法律上、依頼を受けて物を見ているだけの存在にすぎない。
都の消費生活センターに寄せられた予備調査業に関する相談は、昨年度で214件。「高額な追加調査を勧められた」「届け出の代行を名乗られた」といった内容が多い。届け出の代行は、制度上、存在しない。
協会はこの点を三原則の第2に据えた。露木さんは「できないことを『できません』と言う。それが、いちばん最初の仕事です」と述べた。
■センターは欠席
来賓に招かれた第三鑑定センターは出席しなかった。同センターは「いかなる民間調査も公的鑑定の代わりにはならない」とする先の注意喚起(既報)の立場を変えていない。取材に対しては「団体の設立自体に意見を述べる立場にない」と回答した。
ただ、行政内には別の見方もある。ある担当者は「協会経由の届け出が定着すれば、闇市場への横流しの抑止にはなる。認めるのと、数えるのは、別の話です」と話す。TDAの来年度概算要求には、鑑定待ち期間の見える化システムの構築費が盛り込まれた。
■「道具は自前、信用はこれから」
総会後の名刺交換会では、聴音器を仕込んだ革鞄を提げた業者たちが列を作った。鞄の底に集音板を仕込み、容器の外側から内部の反響を聞き取る。センターの非破壊検査とは比ぶべくもないが、「中身が動くか動かないか」は分かるという。
鞄の中身は業者ごとに違う。磁力計を入れる者、温度差を見るために赤外線の体温計を持ち歩く者。露木さんの鞄には、鑑定補助員時代から使っている木製の当て板が1枚入っている。「音を聞くには、まず自分の手が静かでないと駄目なんです。これは、その練習の道具です」
「道具は自前、信用はこれから」と、30代の若手業者は笑った。「道具は自前、信用はこれから」と、30代の若手業者は笑った。「開けたら終わりだって、みんな知ってます。開けなかったから食えている、というほうが正しいかもしれませんが」
依頼者側の声もある。城東の女性(37)は昨年、亡くなった父の家から出てきた金属製の箱の調査を頼んだ。「4カ月待つあいだ、あれが家にあるのが怖くて。開けずに『たぶん空です』と言ってもらえただけで、眠れるようになりました。当たっているかどうかは、まだ分かりません」
■未加盟が多数、残る課題
協会は会費を年3万円とし、三原則に反した会員の除名規定を設けた。ただ第三者による監査の仕組みはなく、記録の様式もこれから定める。都内で営業する予備調査業者は少なくとも150に上るとみられ、加盟は3分の1に届かない。
会員名簿は協会の窓口で閲覧できるが、公開はしない方針だ。「うちに頼んだことを、家族にも言いたくない依頼者がいます」と露木さん。名簿の扱いは、発足初日から持ち越しの課題になった。
露木さんは総会の最後にこう言い添えた。露木さんは総会の最後にこう言い添えた。「入っていない業者を悪く言うつもりはありません。ただ、名簿があるということは、名前が消せるということです。それだけでも意味があると思っています」

