第3窓「粘体の沼」、体色の変化に初めて相関 「見ている」証拠にはならず
多摩東部の第3定常窓「粘体の沼」で、窓の前に繰り返し現れる一体の色変化のタイミングと、窓室側の照明や動きとの間にわずかな統計的な相関がみられたと、次元調査課が11日、明らかにした。「見ているのでは」と話題になってきた個体だが、担当者は「意思疎通の証拠にはならない」と繰り返し強調している。
■稲城の谷、静かな窓
多摩東部・稲城の谷にある第3定常窓は、2025年6月の稼働以来、5窓の中でも観測記録が地味な部類とされてきた。次元調査課の仮称「粘体の沼」――第88系統――では、半透明の粘性生物とみられる存在が主要な生命として観測され、俗称「スライム」として市民にも知られる。個体どうしが体色を変えながら寄り集まる様子はたびたび記録されてきたが、人間や人間に類する姿は一度も確認されていない。
窓の前には、しばしば同じ一体とみられる個体が現れ、こちらの動きに合わせるように色を変えるとして、以前から「見ているのではないか」と窓番のあいだで話題になってきた。ただし、これまで裏付けとなる記録はなく、あくまで印象の域を出ないとされてきた。
■数週間分の記録を解析
次元調査課は11日、過去数週間分の観測映像を統計的に処理した結果を公表した。窓室側の照明の点灯・消灯や、窓番の動作の頻度と、当該個体の体色変化のタイミングとの間に、偶然とは言い切れない程度の弱い相関が確認されたという。担当者は「これまでは『そう見える』という感覚の話だったが、数字の上でも、まったくの偶然とは言いにくい傾向が出た。今回初めてのことだ」と説明した。
もっとも、相関の強さそのものは大きくなく、統計を担当した外部の研究者は「因果関係を示すものではない。窓室の光量が変わればこちら側の何かも連動して変化している可能性があり、個体の反応と誤認しているだけかもしれない」と慎重な言い回しを崩さなかった。次元調査課もこの立場を踏襲し、「『見ている』ことの証明にはまったくならない」と重ねて強調している。
■窓番の日誌から
窓室に日誌を残す窓番の一人は「その個体には、いつからか勝手に呼び名がついている。誰が最初に言い出したかは分からないが、みんな『見張り』と呼んでいる」と明かした。「色が変わる瞬間、こちらの手元のランプを动かしたのと重なることが確かに多い気がしていた。数字にしてもらえて、感覚だけの話じゃなくなったのは正直うれしい。でも、だから何なのか、と聞かれると、まだ何も言えない」
粘体の意思疎通の仕組み自体、次元調査課によれば「色の変化がこちら側の言う意味での言語なのか、単なる生理反応なのかも未確認のまま」だという。担当者は「向こうに意思があるかどうかを、こちらの相関係数だけで決めてはいけない。今回の結果は、観測を続ける理由が一つ増えた、というだけのことだ」と述べた。
■倫理検討会の議題に追加へ
次元調査課はこれまで、長時間・高密度の観測への対応方針と「見ていていいのか」という倫理論争を議題とする外部有識者検討会を11月に開くと既報のとおり発表している。担当者は今回の結果について「向こう側に何らかの反応があるらしいとなれば、観測を続けること自体の重みが増す。検討会には、この件も含めて諮りたい」と話した。
窓グッズを扱う民間業者からは、既に「見張り」をモチーフにした商品の相談が寄せられているというが、次元調査課は「今回の発表を機に、画像や呼称の扱いをあらためて整理したい」としており、公式な取り扱いは依然として検討中としている。
■今後
第3窓は12日午前時点でも観測を継続しており、次の統計処理は月内をめどに行う予定という。次元調査課の担当者は「向こうに意思があってもなくても、記録の取り方は変わらない。ただ、今回のことで、記録を取る手つきが少し丁寧になった気はする」と話した。戸田輪記者は「数字は偶然を否定しない。否定できないことを、否定できないまま書くのが、この面の仕事だと思う」と結んだ。
