深川の漂着物、開封審議入り 「傾けても液面動かず」の報告に結論持ち越し
深川で回収された漂着物の容器内部に液体とみられる像が確認された問題(既報)で、TDAの検疫委員会は30日、開封の可否をめぐる審議に入った。追加の非破壊検査で「容器を傾けても液面の像が追従しない」ことが報告され、初会合は結論を持ち越した。
■五度刻みで、十五度まで
3点の漂着物は21日の回収以来、亀戸の第三鑑定センターの隔離区画に置かれている。最大の容器に約180リットルの液体とみられる像があること、その液体が既知のどの世界線の水とも同位体比が一致しないことは29日に公表され、検疫委員会は同日、開封を当面見送ることを全会一致で決めていた。今回の審議は、その後にセンターが実施した追加の非破壊検査の結果を受けたものだ。
検査は26日から29日にかけて行われた。容器を傾斜台に載せ、水平から5度刻みで最大15度まで傾け、各角度で30分静置したうえで、X線透視と音響計測の二つの手法で内部の像を記録した。センターによると、容器が傾いても、液面らしい像は一貫して水平を保ったまま動かなかった。気泡に相当する像の移動も確認されていない。
「揺らしても、待っても、同じでした」と検査を担当した鑑定官は説明した。「傾斜台のモーターは、ふだん重量計の校正に使う古い台のものです。まさか、こちらの水平を疑う日が来るとは思っていませんでした」
■「自分たちの物差しを疑う段階」
30日の初会合で委員会は、この結果を「計測系の異常か、対象の性質か、現時点では切り分けられない」と評価した。そのうえで、開封の可否を論じる前に検査手法そのものの検証を先に行うことを決めた。9月上旬までに、同型の校正用容器に既知の水を封入して同じ手順で撮影する対照試験を実施し、音響計測側の位相補正のかけ方も見直すという。
委員の一人は会合後、「開けるかどうかの前に、われわれは自分たちの物差しを疑う段階にいます」と話した。別の委員は「異常であってほしい、と思っている委員が何人かいるのは事実です。機器の不具合なら、直せばいい」と漏らした。
■期限のない制度のなかで
検疫委員会は次元境界管理法に基づき第三鑑定センターに置かれる合議機関で、外部の研究者を含む9人で構成される。漂着物の開封には全会一致を要する一方、同法は鑑定の期限を定めていない。センターの鑑定待ちは約1,400点、最も古いものは19年前の回収品だ。
「急ぐ理由がないことが、この制度の唯一の強みです」とセンターの担当者は言う。「待たせていることは分かっています。ただ、待てるうちは待つ、というのが検疫の作法です」。センターは、対照試験の結果と次回会合の日程を9月中旬に公表するとしている。
■残る2点と、待ち行列の順番
3点のうち、繊維状の内容物が確認された容器とほぼ空の容器については、今回の傾斜検査は行われていない。傾斜台に載せられる重量の上限を超えるためで、センターは架台の補強を来年度予算に要求している。容器表面の刻印は写字による記録を終え、国際共同研究の照合データベースに登録済みだが、照合結果が出るまでには数カ月かかる見通しだ。
審議入りをめぐっては、回収から10日足らずで委員会が開かれたことを「異例の速さ」と評価する声と、「順番を飛ばしている」との声の両方がセンターに届いている。担当者は「深川の3点だけを特別扱いしているつもりはありません。ただ、内部で何かが動かない、という報告が上がってきた以上、動かない理由を先に調べるのが筋です」と説明した。
■現場には、まだ花
容器は引き続き検疫区画で保管され、区画への立ち入りは1日2回の点検に限られている。回収現場周辺で健康被害の報告は引き続きなく、深川保健所によると、8月に寄せられた漂着物関連の健康相談は57件で、いずれも症状の訴えではなく「念のため」の問い合わせだった。
回収現場の路上には、いまも花や飲み物を置いていく人が絶えない。近くで理髪店を営む男性(66)は「うちの客は、中身の話ばかりします。水だ、いや水じゃない、と。私は、傾けても動かないって話のほうが気味が悪いと思いますがね」と話した。「動かないってことは、あれは、うちの床の水平とは別のものを見ているってことでしょう」



