大潮の週末、湾岸に観測を集中 TDA、潮汐相関説を初検証
TDA予報課は1日、湾岸部の透過指数と潮汐の相関を指摘した湾洋大学の解析(既報)を受け、今週末の大潮に合わせた集中観測を5日から3日間実施すると発表した。相関説の検証を目的とする観測は初めて。倉庫街の臨時観測点2カ所に加え、移動観測車2台を岸壁沿いに配置する。
■三日間、二カ所と二台
集中観測は5日午前0時から7日午後11時59分まで。8月に増設された倉庫街の臨時観測点2カ所を軸に、移動観測車2台を岸壁沿いの2地点に置き、計4点で連続記録をとる。潮位は港湾局の検潮所から毎分値の提供を受け、指数と同一の時刻系にそろえる。予報課によると、指数と潮位を秒単位で突き合わせる態勢を組むのは今回が初めてだという。
満潮と干潮の前後2時間は「重点時間帯」とし、この時間だけ現場の人員を倍にする。6日未明の干潮帯には照明車も入る。「一日で最も見たい時間が、いちばん暗くて、いちばん足場が悪い」と現場を率いる予報官は言う。「観測というのは、だいたいそういうものです」
湾岸では8月、透過指数が「中」となった日が14日に達し、平年の倍を超えた(既報)。予報課は原因を特定できていない。
観測員は3交代で、1直あたり9人。臨時観測点の2カ所は8月の増設時から24時間態勢が続いており、今回はそこへ本局から4人が加わる。移動観測車の乗員は「車内で仮眠、食事は交代で車外」という運用になる。予報課の準備会議では、機材より先に、3日分の飲料水の量が議題に上ったという。
■判定の物差しを、先に
今回、予報課は異例の手続きをとった。「何をもって相関ありとするか」の判定基準を、観測を始める前に公表したのだ。満潮と干潮の前後の指数が、直近30日の同時刻の平均をどれだけ上回れば有意とみなすか。その数値を書いた3ページの文書を、1日付でウェブに掲載した。
「後から線を引けば、たいていの図は何かに見えます」と予報官は言う。「先に線を引いておけば、外れたときに外れたと言えます」。基準を事前に出すやり方は、TDAの観測業務ではこれまで例がないという。
大潮は月に2回巡る。3日間で結論が出ないことは、予報課も承知している。「今回で決着はつきません。つかないと分かっていて、最初の一回をやる。それだけです」
■「消えるなら消えるで」
相関を報告したのは、湾洋大学の海洋物理学者、浦戸明日香さん(39)の研究室だ。湾岸4地点の過去3年分の指数と潮位を突き合わせ、大潮の前後に指数がわずかに上振れする傾向を示した。今回の観測にもデータ解析で協力する。
解析が公表されたのは8月30日。学会誌ではなく、大学の紀要と記者会見という形をとった。「査読を待っていると、大潮が二回過ぎます」というのが浦戸さんの説明だ。専門家の受け止めは慎重なものが多い。潮汐との相関は過去にも複数回指摘され、そのつど観測期間の短さを理由に退けられてきた経緯がある。
「相関が消えるなら消えるで収穫です。検証というのは、当てにいくことではないので」。浦戸さんは研究室でそう話した。台帳の数字を手作業で打ち込む作業に、学生3人の夏が丸ごと消えたという。「学生には申し訳ないことをしました。でも、あの子たちが打ち込んだ数字が正しいかどうかを、今週末に海が答えてくれます」
■機構のない相関
予報課は慎重な姿勢を崩していない。「仮に相関が確かめられても、機構が分からないままでは予報には使えない」というのが、発表の席で繰り返された言い方だ。透過指数の予報式には、これまで気温や気圧との相関が候補に挙がっては消えてきた経緯がある。統計的な結びつきだけを根拠に予報へ組み込んだ例はない。
それでも観測資源を週末に集中させるのは、今夏の指数高止まりについて「現状、潮汐のほかに説明材料がない」(同課)ためだ。指数連動型の料金や保険(既報)が広がり、内陸倉庫の賃料が上がり(既報)、予報の一つひとつが商いの数字に直結するようになった。予報課の幹部は「外れることを恐れて何も試さない、というのが、いちばん高くつく」と述べた。
観測結果の速報は8日、中間的な解析は9月中旬に公表する予定という。
湾岸で漁協の当番を務める男性(64)は、潮見表を店先に貼って40年になる。「潮の日にちだけは、こっちが先に知ってるんです。指数の紙も並べて貼るようになったのは、去年から。二枚並べると、まあ、見比べますよね。似てる気がする日はあります。気がするだけですが」
予報課はこうした「現場の実感」について、否定も肯定もしていない。「実感は仮説の種にはなりますが、検証の材料にはなりません。だから週末に、材料をとりに行きます」
■外れたときのために
予報課が事前に基準を出した背景には、この夏に高まった説明責任への圧力もある。指数の予報は、いまや駐車料金やタクシーの運賃、保険料の算定にまで入り込んでいる(既報)。予報が動けば、誰かの支払いが動く。「当たった、外れたの前に、何を根拠にそう言ったのかを出しておく。それがなければ、次の予報を信じてもらえません」と幹部は述べた。
一方、湾洋大の浦戸さんは、検証の結果が「相関なし」に終わった場合の発表も、同じ手順で行うと明言している。「消えた仮説を、消えたと書いて残す人がいないんです。誰かがやらないと、十年後にまた同じ相関が『新発見』として出てきます」
■最終日は記念日
観測最終日の7日は漂着記念日と重なる。式典が開かれる岸浜公園の周辺も観測範囲に含まれるが、同課は「式典とは無関係の、暦の偶然です」と付け加えた。会場付近には移動観測車を入れず、機材は公園東側の護岸に据える。
式典を所管する市の担当者は「観測があること自体は、来場者に伝えます。伝えないと、かえって何かがあると思われますから」と話す。当日、公園内には観測についての掲示が3カ所に出る予定だ。
倉庫街の警備員の男性(58)は、夜勤の巡回路から観測車をよく見かける。「潮が引くと、においが変わるんです。それであの車が来ると、ああ今日は大潮かと分かる。指数の話は分かりませんが、潮の話なら、こっちのほうが先に知っています」
港湾局は検潮所のデータ提供のほか、観測車を置く2地点の岸壁を3日間、車両の通行から外す。湾岸モノレールも、観測点に近い区間で工事車両の夜間搬入を7日まで見合わせる。指数の観測に合わせてこれだけの調整が入るのは、この夏に入ってから3度目だ。
同課はまた、観測期間中に岸壁付近で「岸見物」の人出が増えることを警戒している。市議会では岸見物をめぐる条例案の審議が続いており(既報)、規制線の内側への立ち入りは、指数の高低にかかわらず違法となる。
予報課は、観測期間中に岸壁付近へ立ち入らないよう改めて呼びかけている。「大潮の干潮帯は、ふだん歩けない場所が歩けるように見えます。見えるだけです」


