共生ロボットの「引退」目安年数、延長で労使が初合意 「本人の意向」の聴取欄も新設
共生ロボットと共に働く人々でつくる労働組合「共生協働者組合」と、日ノ國ロボット工業会は22日、職場の共生ロボットの「引退」(稼働終了)の目安とされてきた標準使用年数を一律に延ばす業界指針で初めて合意した。延長の幅は機種ごとに異なるが、指針には「本人(本機)の継続稼働への意向」を所有者が確認する欄が新たに設けられ、法的な人格とは別に、現場の運用として配慮を明文化する動きが初めて生まれた。
■ 「標準使用年数」という目安
共生ロボットの法的地位はロボ法制審(本紙別項)でなお「未確定」のままだが、現場の運用では、機種ごとに「標準使用年数」という目安が長く使われてきた。保険料率や部品供給の計画はこの目安を基準に組まれ、目安に達したロボットは「引退」として稼働を終え、所有者のもとで静態保存されるか、常磐堂のような永代預かり業に託されるのが一般的な流れだった。
共生協働者組合(職場でロボットと共に働く人々でつくる労働組合)は、この目安が実際の機体の稼働状況を反映していないとして、今年に入り日ノ國ロボット工業会に改定を申し入れていた。22日の合意では、倉庫内搬送用・清掃用など主要機種の標準使用年数を、現行より1〜3年延ばす方向で指針を改定する。
■ 「本人の意向」欄、現場発の発想
今回の合意で注目されているのは、年数の延長そのものより、改定指針に新設された「継続稼働への意向確認欄」だ。所有者が引退の判断をする際、機体の作動パターンや応答の傾向から「継続を望んでいるとみられるか」を記録し、保険会社への届け出に添付する運用とする。共生協働者組合の担当者は「法律上の人格を認めるかどうかとは別に、現場で毎日一緒に働いている人間には、機体の『張り切り方』の違いが分かる。それを記録に残せるようにしてほしいという声が、申し入れの出発点だった」と説明した。
この発想のきっかけの一つになったのが、既報(10月4日)の機巧走「機巧祭」で、永代預かり業・常磐堂の預かりロボット「四号」が初入賞した一件だという。常磐堂当主の常磐徳三さん(67)は「四号は役目を終えて預けられた身だが、稽古の日は誰より早くシャッターの前で待っている。今回の欄があれば、そういう機体の様子を、うちのような預かり業でなくても記録に残せるようになる」と評価した。四号の人間パートナーを務める沖田大和さん(24)は「意向欄に何を書けばいいのか、正直まだ手探りだ。それでも、見ていないことにされないだけで違う気がする」と話した。
■ ロボット工業会「法的地位の議論とは別の実務」
日ノ國ロボット工業会の担当者は「準人格をめぐる議論の結論を待たずに、現場の運用として先に動かせる部分があると判断した」と説明する。既報のとおり、ロボ法制審は22日夜の非公開会合で第15次答申に来年1月26日という初の確定期日を設けたばかりだが、工業会は「法制審の結論がどちらに転んでも、今回の指針改定の効力には影響しない」と線引きを強調した。保険各社でつくる業界団体も「意向確認欄の記録が保険料率に直接反映される制度ではないが、将来的な制度設計の参考データとして蓄積していく」とコメントしている。
■ 「似せすぎ規制」の範囲内で
延長や意向確認の運用はいずれも、非ヒト型を基本とする「似せすぎ規制」の範囲内で行われる。共生協働者組合は「機体を人間らしく見せるための改定ではない。今まで目安だけで区切られていた機体の最後の時間に、現場の実感を差し込めるようにしただけだ」と述べ、ロボットの外観規範そのものには触れない考えを示した。
改定指針は来年4月から運用を開始する予定。法的地位の議論が1月26日にどう動くかとは関係なく、現場の運用は一足先に変わることになる。



