「指数相場」に過熱注意 八谷計器株が上場来高値、証券各社が呼びかけ
家庭用透過指数計の予約好調(既報)を材料に、八谷計器の株価が31日、東亰取引所で上場来高値を更新した。観測機器・損保・鑑定関連の銘柄に資金が集まる「指数相場」の様相に、証券各社は「予報と業績は別物」と過熱への注意を呼びかけている。
■今月だけで4割高
八谷計器の31日終値は前日比6%高。上場来高値を更新し、今月だけで約4割上昇した。売買代金は年初の平均の11倍に膨らんでいる。
きっかけは、家庭用透過指数計「ゆらぎメーターHome」の予約が想定を大きく超えたことだ(既報)。同社は湾岸の工場で生産する据置型の計測器を本業とし、家庭用は売上高の1割に満たない。それでも「指数を家に置く」という一点が、買いの理由になった。
買いは周辺に広がった。予報連動型保険を扱う損保2社が今月それぞれ2割前後上げ、鑑定人養成講座を持つ教育関連や、内陸倉庫を持つ不動産にも波及した。鑑定人養成講座を持つ教育関連は、受講申し込みが前年の3倍に伸びたと発表した直後に買われた。もっとも養成課程は2年で、収益に反映されるのは再来年度以降になる。市場ではこの一群を「指数相場」と呼ぶ。市場ではこの一群を「指数相場」と呼ぶ。
■「連想は、下がる日を考えない」
背景には今夏の湾岸部の透過指数の高止まりがある。ある市場関係者は言う。「指数が上がるとお守りが売れ、保険が売れ、内陸の倉庫が埋まる。そういう連想です。連想は、指数が下がる日のことを考えません」
信用買い残は8月に入って2.3倍に増えた。個人の比率が高く、値動きの荒さに拍車をかけている。
証券各社は「予報と業績は別物」と繰り返す。大手の投資情報部長は「観測関連の増益は、機器の耐用年数と更新周期に規定されます。指数が高い夏が一度あったからといって、来期の受注が倍にはなりません」と話す。
■5年前の「回収バブル」と
指数相場という言葉自体は新しくない。5年前、瑠海との鑑定協力協定の締結時にも海洋回収関連が急騰し、半年後には大半が元の水準に戻った。当時を知る運用担当者は「あのときも理屈はありました。理屈のある相場ほど、降りるのが遅れます」と話す。
今回が異なるのは、材料が家庭の消費であることだ。予報連動型保険の新規契約は漂着物特約の6割を超え(既報)、指数はすでに家計の支出項目になりつつある。証券会社の分析リポートは「一過性の防災需要とみるか、恒常的な生活インフラ需要とみるかで、妥当な倍率は倍以上違う」と指摘する。
■取引所も一般論で注意
東亰取引所は31日、個別銘柄には触れない形で「特定のテーマへの過度な集中は価格形成をゆがめる恐れがある」との一般的な注意喚起を出した。売買監理銘柄への指定など具体的な措置は取っていない。
個人投資家向けの説明会では、地味な助言が繰り返されている。「揺らぎ関連は業績で買ってください」。城東の支店で開かれた会には定員の倍の申し込みがあり、担当者は「熱心なのはありがたいのですが、来る理由が『上がっているから』では困るんです」と苦笑した。
同取引所によると、8月の八谷計器株の売買のうち個人の比率は7割を超えた。回転の速さも目立ち、同じ株が一日のうちに何度も持ち主を替えている。
■「作って、売るだけです」
当の八谷計器は株価について「コメントしません。作って、売るだけです」(広報)としている。同社は家庭用の生産ラインを2交代から3交代に増やしたが、心臓部の受感素子の調達が追いつかず、現在の予約分の出荷完了は来春になる見通しだ。
工場のある湾岸地区では、求人の張り紙が増えた。近くの定食屋の店主(58)は「昼のピークが30分ずれました。株のことは分かりませんが、ご飯の炊く量は分かります」と話す。
■街の温度
支店の店頭で電光表示を見上げていた個人投資家の男性(63)は、こう言って笑った。「孫に一台買ってやったんですよ、あの白いやつを。そうしたら値上がりしたのは株のほうでした」
もっとも、その男性は続けた。「うちの娘は湾岸に住んでます。指数が上がって儲かる株を持っているというのは、あんまり気分のいいものじゃない。だから、そろそろ売ろうかと思ってるんです」


