窓条約に「付属書」はあった 出発の朝、外務省が一転認めた
「存在しない」と繰り返してきた一枚が、今朝、あった。外務省は2日朝、窓条約の非公開付属書についてこれまでの否定を一転させ、文書そのものの存在を初めて認めた。既報の代表団は団長・雨宮悠一審議官(55)のもとで予定どおり羽田空路から出発し、主権派・宗像鉄男(58)は同日の国会でただちに追及に動いた。観測データ公開法案の趣旨説明も同じ本会議で行われ、「公開」をめぐる話が国内と国外で同時に動く一日になった。
■ 「ない」から「ある」へ
外務省報道官は2日早朝、定例会見で「同盟国への優先供与に関する非公開の付属書」について、これまでの説明を覆し、「そのような性質の文書は存在する」と初めて明言した。既報(10月11日)以来、本紙の取材に対しても国会答弁でも「そのような文書は存在しない」と繰り返してきた同じ役所が、三週間余りを経て立場を変えた。報道官は「『存在しない』という説明が、文書そのものの不存在ではなく、公表できる性質の文書ではないという趣旨だったことを、改めて正確に説明する必要があると判断した」と述べたが、記者団の「それは実質的な撤回か」との問いには「表現の精度を上げたものだ」とだけ答え、明確な答えを避けた。
■ 内容は見せない、存在だけを認める
報道官は、文書の表題・条文数・作成時期のいずれについても明らかにせず、「アメリアとの間で、同盟国への優先供与に関する技術的な取り扱いを記した文書がある」という一文のみを認めた。既報の「覚書」との関係についても「同一の文書を指すのか、重なる部分のある別の文書なのかは、現時点で説明できる段階にない」とし、宗像鉄男がかねて主張していた「覚書と付属書は同じものを名前を変えて呼んでいるだけだ」という見立てを裏付けるのか否定するのかも明らかにしなかった。公開か非公開かの扱いは、現地協議の結果が出るまで決めないという。
■ 三週間の経緯
既報どおり、この疑念が本紙に最初に寄せられたのは10月11日。与党関係者の「別枠の話は、実はもうかなり紙になっている」という一言をきっかけに、本紙は複数の関係者に取材を続けてきたが、外務省はその都度「そのような文書は存在しない」と否定し、国会でも同じ答弁が繰り返されてきた。10月30日の代表団出発日確定の際にも、宗像は「全文公開か要旨公開かという対立そのものが、『付属書』という言葉を『覚書』に変えただけだという指摘を裏づけている」と述べていたが、外務省はこの時点でも存在そのものの否定を変えていなかった。三週間にわたる否定の末に、代表団出発というまさにその朝に立場が覆ったことについて、本紙の取材に応じた外務省関係者の一人は「いつまでも『存在しない』で押し通すには、無理が出てきていたのは事実だ」と匿名で明かした。
■ 雨宮審議官「交渉の中身は変えない」出発
代表団は2日午前、既報(10月30日)どおり羽田空路からヘルヴェティア・ジェネーバへ出発した。団長・雨宮悠一審議官(55)は出発ロビーで記者団に囲まれ、「省の説明が変わったことは承知している。ただ、現地での協議の中身自体が今日から変わるわけではない。全文公開か要旨公開かという、もともと最後まで残っていた論点に変わりはない」と述べ、足早にゲートへ向かった。同行する東亰精密光学の国際事業担当幹部は「技術的な助言の範囲に徹する立場に変わりはない」とだけ短く答えた。
■ 宗像鉄男、国会で即座に追及
主権派の衆議院議員・宗像鉄男(58、既報)は2日の衆院本会議で、代表団出発の報を受けてすぐさま質疑に立った。「三週間前には『存在しない』、今朝には『ある』。この変わり身の速さこそが、最初から何かがあったことの証拠だ」と外務省を追及し、文書の公開を強く求めた。外務大臣は「交渉中の事項であり、現時点でこれ以上の説明は差し控える」と答弁を繰り返し、具体的な言及を避けた。与党「観測を拓く会」呼びかけ人・三宅奏太(44、既報)は「否定が覆ったことは重く受け止めるべきだが、だからといって全文公開を急がせれば交渉自体を壊す恐れもある」と慎重な見方を示した。
■ 観測データ公開法案も、同じ本会議で
既報(10月28日)どおり、観測データ公開法案の趣旨説明も2日の衆院本会議で行われた。実質審議は5日の週からの見通しに変わりはなく、本会議での趣旨説明自体は既報の日程どおり短時間で終わった。国会関係者の一人は「窓条約の付属書が『ある』と分かった同じ日に、国内の公開法案の審議が始まったのは、偶然だとしても分かりやすすぎる一日だった」と話した。外務省は両者が制度上別筋であることを改めて述べている。
■ 各陣営の反応
公開派の筆頭格・ノルディア連合は駐日大使館を通じ、「存在そのものが否定されてきた文書の存在が認められたことは重い。全文公開を改めて求める」との談話を出した。主権派の玄洲大使館は「かねての懸念が裏付けられた形だ」とコメント、具体的な証拠の提示は今回も無かった。中間派のアメリア大使館筋は「同盟国間の技術的な取り扱いに関する文書であり、内容の性質上、全面公開は適切でないという立場に変わりはない」と述べた。
■ 工場で聞いた声
既報の東亰精密光学の窓機部品量産ラインで働く香月修一(かづき・しゅういち、52)は、出発前のテレビ中継を工場の休憩室で見ていたという。「付属書がある、公開するかどうかはまだ決まっていない、と聞いて、正直どきりとした。全文公開になって同盟国への優先供与の話が白紙に近い形になれば、うちの契約の規模そのものが変わりかねない。来月着工する量産ラインには、もう部材を発注している」と語る。既報(10月24日)の本契約合意以来、ラインの新規人員を見込んで住宅ローンを組んだ同僚もいるといい、「交渉の中身は雨宮さんたちに任せるしかないが、現場としては、何も変わらないでいてほしいという気持ちと、早く全部を知りたいという気持ちが半々だ」と話した。
■ 1988年の条約との距離
既報どおり、透過条約(1988)は軍事転用禁止・観測データ共有をいずれも「努力義務」にとどめており、窓条約はこの弱さを埋める新条約として位置づけられてきた。IDBO関係者の一人は「努力義務の時代の条文を、義務規定に書き換える作業そのものが難航するのは当初から想定されていた。付属書の存在が今日認められたことは、その難航ぶりを可視化しただけだとも言える」と述べ、今回の一転が交渉の失敗ではなく、むしろ長引く調整の副産物だという見方を示した。
■ 今後
代表団は現地到着後、1週間程度の協議に入る見通し。文書の名称・内容・公開範囲のいずれも、2日の時点では確認できないまま残された。外務省は「協議の進展に応じて、説明できる段階で改めて説明する」としており、全文の扱いが決まるのは早くても協議終了後になる見通しだ。本紙は宗像の追及の行方と、現地からの第一報、そして香月のような現場の声の両方を追う。






