瑠海国王カイエ3世、4日間の来訪終え離亰 岸浦汐さんと非公式に面会していたことが判明
瑠海王国の国王カイエ3世(34)は22日午前、羽田空路から離亰し、19日から4日間にわたった史上初の国王来訪の日程を終えた。外務省・宮内庁は離亰にあたり、来年を目途に鵜飼素子市長による瑠海への答礼訪問を検討する方向で基本合意したと発表した。一方、随行したトゥイ・マカレア侍従長(52)は会見で、国王が21日夜、非公式に音楽教師・岸浦汐さん(74、漂着一世)と面会していたことを明らかにした。公式日程には記載のない、ごく短い時間だったという。
■ 午前8時50分、羽田空路から離亰
瑠海王国の国王カイエ3世(34)は22日午前8時50分、羽田空路の発着施設から専用機で離亰した。19日午後の到着(既報)以来、20日の鑑定協力協定拡大の署名式と第三鑑定センター視察、21日の第1窓「灯しの街」見学(既報どおり開口は見られず)と続いた4日間の日程が、これで一区切りとなった。見送りには鵜飼素子市長、外務省・宮内庁の担当者に加え、既報どおり東亰刀士会の刀士2人と監視業組合の潜行監視員1人が最後まで付いた。国王は発着施設の手前で一度足を止め、見送りの列に向かって小さく手を振ったという。
鵜飼市長は見送りのあと記者団に「4日間、数字では測れないものをたくさんいただいた気がする。来年の話は、まず行き先が決まったことを見てから、中身はこれから騒ぎましょう」と、既報どおりの口癖を今回も織り込んで話した。
■ 来年、答礼訪問を検討する方向で基本合意
外務省は離亰にあたり、来年を目途に鵜飼市長による瑠海王国への答礼訪問を検討する方向で、両政府が基本合意したと発表した。外務省国際協力局審議官・雨宮悠一氏(55、既報)は「国王陛下の来訪が史上初めてだったのと同じく、本市の首長が瑠海を訪れることがあれば、これもまた初めての出来事になる。日程・規模はこれから詰めるが、行く方向そのものは固まったと申し上げてよい」と述べた。既報どおり拾い上げ庁次官マノン・ケイレア氏が窓口となる見通しで、碧海諸島との鑑定人材先行派遣(11月10日ごろから、既報)の進み具合も踏まえながら調整するという。
瑠海側のマカレア侍従長は「陛下はかねて、受け取るだけでなく訪ねることの意味を大切にされてきた。市長にお越しいただけるなら、今度は私たちが見せる側になる」とコメントした。
■ マカレア侍従長「公式日程の外で、一つだけ」
離亰前の会見でマカレア侍従長は、4日間の総括を述べたあとに「公式日程の外で、一つだけお伝えしたいことがある」と切り出した。21日夜、第1窓の見学で窓が開かなかったあの日の夜、国王は深川に住む音楽教師・岸浦汐さん(74)の自宅を、ごく短時間だが非公式に訪れていたという。「随行は私と通訳の二人だけで、写真も記録も残していない。陛下ご自身が『公式の行事にはしないでほしい』と望まれたので、本来なら申し上げるつもりもなかった。ただ、こちらの新聞社が岸浦さんのお名前をすでに記事にしていると伺い、黙っているより、きちんとお伝えするほうが筋だろうと考えた」とマカレア侍従長は説明した。
■ 岸浦汐さん「子守唄を、少しだけ歌った」
本紙は22日、岸浦汐さんに取材した。岸浦さんによると、21日午後8時すぎ、宮内庁職員から「非公式に訪ねたい方がいる」と連絡があり、三十分ほどの間に身支度を整えたという。「国王様だと知ったときは、正直、何を話せばいいのか分からなかった。でも座敷に上がられた陛下は、まず『あなたも一世なんですね』と聞かれた。それで、肩の力が抜けた」と振り返る。
岸浦さんによると、国王は瑠海の王室も漂着民の血を引くこと、自分の曾祖母が一世だったことに触れ、「一世という言葉を持つ者同士として、話したかった」と語ったという。既報(10月中旬)の「岸の子守唄」と第5窓「剣の国」の節回しの類似についても話題になったが、岸浦さんは「似ているかと聞かれたので、似ている気はするが、よく似た歌はどこの土地にもあるものだとも思う、とお答えした。陛下もそれ以上は踏み込まれなかった」と話す。最後に求められて、子守唄を少しだけ、声を抑えて歌ったという。「うまく歌えたかどうかは分からない。ただ、陛下が目を閉じて聴いてくださったのは覚えている」。
岸浦さんは「自分たちの故郷がどこなのか、本当のところは誰にも分からない。それでも、分からないまま誰かと分かち合えるものがあるのだと、この年になって初めて知った気がする」と静かに話した。
■ TDA・次元調査課「関連づける材料はない」
本紙の取材に対し、TDA次元調査課は「岸浦氏の私的な面会は本課の案件ではないが、第5窓『剣の国』の正体と岸浦氏の子守唄を結びつける学術的な材料は、今回も含めて得られていない」と改めて述べた。既報どおり第5窓の送付物(10月20日回収)の解読も11月以降に持ち越されたままで、物事を急いで結びつけないという次元調査課の姿勢に変わりはない。
■ 窓条約・瑠海先行派遣は従来どおり
外務省は、既報の窓条約の覚書をめぐる論点(21日既報)や、碧海諸島を含む11月の瑠海先行派遣の日程には今回の来訪による変更はないとした上で、「今回の来訪全体を通じて、公開派・中間派いずれの陣営からも概ね歓迎の反応を得られたことは、年内調印を目指す交渉においても追い風になる」と述べた。
■ 公式日程には、どこにも記されていない
国王を乗せた専用機は午前9時すぎ、羽田空路を離れた。4日間、本紙が報じた出来事の多くは、署名式や窓室見学のような公式の場面だった。だが21日の夜、深川の小さな座敷で一世同士が言葉を交わした時間は、どの公式日程にも記されていない。それでも、確かにあった。











