湾岸モノレールの「傘」、初めて乗客の目の前で 走行中の座席に現れる
湾岸モノレールの座席に出現する台帳にない長傘について、20日午後、走行中の車内で乗客が出現の瞬間を直接目撃していたことが分かった。これまでの5件はいずれも回送最終便後の点検で「見つかる」事例だったが、今回は乗客が乗っている通常運行中の車両で、数分前まで空いていた座席に突然傘が現れたという。会社は該当列車を運行終了後に一時使用停止とした。
■ 「ふと見たら、そこにあった」
湾岸モノレールの深川発・亀戸行き、20日午後2時40分発の便に乗っていた会社員男性(44)が本紙の取材に応じた。男性によると、乗車してから10分ほど経ったころ、2列前の窓側座席——それまで空席だったのを覚えている——に、ふと視線をやると紺色の長傘が立てかけられていたという。「忘れ物かと思って気にしなかったが、その座席には誰も座っていなかったし、自分が乗ってからその席に誰かが近づいた記憶もない。気づいたときにはもう、そこにあった」と振り返る。男性は既報の「傘」の件を知っていたため、すぐに車掌に伝えたという。
既報の5件はいずれも回送最終便後、車庫での終業点検で発見される事例だった。今回は通常運行中、乗客が乗車した状態の車両で、しかも目撃者が「出現の前後」を直接見ていた点が、これまでと大きく異なる。会社の広報担当者は「これまでは『見つかった』としか言えなかった。今回は乗客の方が『出現した場面に近い状況』を目撃している、という点で、位置づけが変わる事例だと受け止めている」と述べた。
■ 「誰かが置いた」ではない、という手触り
車掌が駆けつけた時点で、座席には紺色の長傘が立てかけられた状態で残されていた。既報の5件と同じく、座席の乗客記録・車内カメラの映像を確認したが、該当座席に誰かが近づいたり、傘を持ち込んだりする様子は記録されていなかったという。目撃した男性は「誰かがそっと置いたようなものではない。本当に、何もなかったところに、あった。うまく言葉にできないが、そういう感触だった」と話す。
会社は該当列車を運行終了後に一時使用停止とし、既報の座席使用見合わせ対象(8月24日の発見座席)とは別の車両・座席であることを確認した。車両点検の担当者は「忘れ物台帳・乗務記録・車内カメラの三つに当たらない点は、これまでの5件と変わらない。ただ、目撃されたのは初めてで、どう記録に残すべきか、正直まだ決めかねている」と話した。
■ 乗務員組合、「見ていても分からない」という結論
乗務員組合は21日、緊急の情報共有会を開き、今回の事例を踏まえた対応を協議した。既報どおり8月20日からの2人乗務化、9月10日からの座席使用見合わせと対策を重ねてきたが、今回は走行中の車内という、これまでの対策が前提としていなかった場面での出現になる。組合幹部は「正直、見ていれば分かるものだと思っていた部分がある。それが崩れた。目撃されても、出現の瞬間そのものは誰にも見えていない、という事実だけが残った」と話した。目撃した男性自身も「自分はちゃんと見ていたつもりだったが、結局、傘が現れる瞬間そのものは見ていない。見ていたのに見ていない、という感覚が一番薄気味悪い」と漏らした。
■ 利用者の受け止め、「もう避けようがない」
既報どおり深川―亀戸間を通勤で使う利用者の間では、この件がすでに話題になっている。別の利用者の女性(29)は「座席を選んで避けていたが、走行中の普通の車内でも起きるなら、もう避けようがない。正直、乗るのが少し怖くなった」と話す一方、常連の男性(52)は「6件目と聞いて、もう怖さより『今度はどこで』という野次馬根性が先に来てしまう自分がいる」と複雑な表情を見せた。
■ TDA・鑑定センター、扱いは引き続き未確定
TDA生物管理課は21日、改めて「現時点で漂着生物・漂着物のいずれにも該当する所見はない」とのコメントを出した。既報どおり次元境界管理法上の扱いは依然未確定で、第三鑑定センターへの持ち込みが検討されているというが、窓班の担当者は「次元調査課の案件ではないという整理に変わりはない。未確定物として扱う前例の延長で進めるしかない」と述べるにとどめた。原因・正体ともに、今回もまた分からないまま残された。
■ 会社「次の一手は、まだ見えない」
会社は21日、乗務員組合からの要望を受け、走行中の車内点検の頻度を増やす方針を検討すると明らかにした。しかし広報担当者は「点検を増やしたところで、今回のように数分で現れるものを防げるのか、正直自信はない。次の一手が何になるのか、こちらも見えていない」と率直に認めた。湾岸モノレールの「傘」は、6件目にしてまた一歩、乗客の目の前まで近づいてきた。



