アメリア代表団、羽田沖の第1窓を視察 窓は最後まで開かず 窓条約協議はあす最終日
「窓条約」交渉のため来亰しているアメリア合衆国代表団は10日午前、羽田沖の第1定常窓を視察した。一般公募の見学枠とは別に設けられた特別視察だったが、窓はおよそ2時間の滞在中一度も開かず、代表団は「灯しの街」を見ないまま引き揚げた。実務協議は11日、最終日を迎える。
■特別視察、合意どおり実施
既報のとおり、定常窓技術の移転条件を定める「窓条約」交渉のため9日に来亰したアメリア合衆国代表団12人は10日午前9時すぎ、羽田沖の観測やぐらに向かった。第1定常窓「灯しの街」の視察は、9日の実務協議の場で日ノ國側が提案し、代表団が受け入れる形で急きょ決まったという。通常の一般見学は1日80人の抽選制だが、今回は外交上の特別対応として、通常の見学枠とは別枠で設けられた。
視察には代表団のほか、外務省と次元調査課の担当者が同行した。船で観測やぐらに渡った代表団は、窓室に案内され、次元調査課長から定常窓の仕組みと5窓の概要について説明を受けた。
■窓、最後まで開かず
しかし、代表団が窓室に滞在したおよそ2時間、ガラスの向こうに広がっていたのは湾の暗い海面だけだった。次元調査課によると、この日の第1窓の開閉見込みは「開見込み・夕方」で、午前中の開口は当初から確率が高くない時間帯だったという。それでも代表団の一人は退出時、通訳を介して「せめて一目、と思っていたが」と漏らしたと同行筋は明かす。
外務省筋は「窓が開かなかったこと自体が、皮肉にも一番の説明になった」と振り返る。次元調査課長は本紙の取材に「いつ開くかは、代表団が来ても来なくても同じです。予報はできても、操作はできません」と述べ、既報の「窓は見るための装置。政治の話は政治で」という立場を重ねて強調した。
■「制御不能」を体現した2時間
日ノ國政府にとって、この視察は本来、定常窓技術の実在感と価値を代表団に直接示す狙いがあったとみられる。だが結果として、代表団が目にしたのは「一方通行・制御不能」という揺らぎの基本原則そのものだった。同行した外務省担当者は「誰も、何も、こちらの都合で見せることはできない。それを一番強く伝えられたのは、皮肉にも今日のような日だったのかもしれない」と話した。
■協議は大詰めへ、対立の構図変わらず
視察後、代表団は午後から外務省での実務協議に戻った。既報のとおり、協議では定常窓の設計情報の移転範囲が焦点で、アメリアは同盟国への優先供与と安全保障上の例外を求めている。10日の協議では、既報のドイチェ連邦による部品供給留保の非公式な意向表明について、日ノ國側から改めて説明を求める場面があったという。外務省筋によると、ドイチェ側からは新たな公式コメントは示されておらず、「非公式な意向のまま」という状況に変わりはない。
公開派のノルディア連合は10日、声明の内容を変えていないものの、駐日ノ國大使館を通じて「視察が特定の同盟国にのみ提供されたことは遺憾」との立場を伝えたとされる。主権派の玄洲・ルーシ両国は、既報のとおり交渉そのものから距離を置く姿勢を崩していない。
■反応
視察当日、観測やぐらへの渡船場となった羽田の港には、公開派の立場を支持する市民団体数人が「揺らぎはみんなのもの」と書いた横断幕を掲げた。団体の代表(62)は「アメリアだけが窓を見られて、玄洲やノルディアの市民は見られない。それはおかしいと思う」と話した。一方、観測機器業界の関係者からは「技術を安売りする条約なら、うちの仕事がなくなる」との慎重論も聞かれた。
第1窓の一般見学の応募者からも声が上がった。抽選に落ち続けているという主婦(50)は「特別に見せてもらえる人がいるなら、うちらの抽選も少しは増やしてほしい」と苦笑した。
■11日、最終日へ
実務協議は11日、外務省で最終日を迎える。政府は「各国の意見を聞きながら、揺らぎの平和利用という原則に沿って交渉する」との従来の立場を10日も崩さなかった。外務省筋は「1日で結論が出るとは誰も思っていない。まとまらなければ協議を継続する道も残っている」と話す。代表団は11日夜に離日する予定で、条約の行方は秋の国会の焦点として持ち越される見通しだ。
